- ✓ 粉瘤は皮膚の下にできる良性腫瘍で、放置すると炎症や感染のリスクがあります。
- ✓ 治療の基本は外科的切除であり、炎症の有無によって手術のタイミングや方法が異なります。
- ✓ 日帰り手術が可能で、局所麻酔下で行われることが多く、比較的短時間で完了します。
粉瘤(アテローム)の基礎知識

粉瘤(アテローム)は、皮膚の下にできる良性の腫瘍で、皮膚の表面にあるべき角質や皮脂が袋状の構造物に溜まってしまう状態を指します。当院では、背中や顔、耳の裏など、様々な部位にできた粉瘤について初診時にご相談される患者さまが少なくありません。
- 粉瘤(アテローム)とは
- 皮膚の表皮の一部が皮膚の下に落ち込み、袋状の構造物(嚢腫)を形成し、その中に本来皮膚から排出されるはずの角質や皮脂が溜まってできた良性腫瘍です。毛穴の詰まりや外傷などが原因で発生することが多いとされています。
粉瘤の発生原因と主な症状
粉瘤の発生原因は多岐にわたりますが、最も一般的なのは毛穴の出口が詰まることによって、皮膚の表面にあるべき細胞が皮膚の内部に落ち込み、袋状の構造を形成することです。この袋の中に、本来であれば垢として剥がれ落ちるはずの角質や、皮脂腺から分泌される皮脂が溜まって大きくなっていきます。また、外傷や手術の傷跡に表皮細胞が入り込むことで発生する「外傷性表皮嚢腫」と呼ばれる粉瘤もあります[4]。稀に、先天的な要因で発生することもあります[3]。
主な症状としては、皮膚の下にドーム状に盛り上がったしこりが触れることです。多くの場合、痛みやかゆみはありませんが、中央に黒い点(開口部)が見られることがあります。この開口部から、独特の臭いを伴う内容物が出てくることもあります。サイズは数ミリから数センチ、まれに10センチを超える巨大なものまで様々です。私が診察する中で、患者さまが「最初はニキビだと思った」とおっしゃることが多く、気づかないうちに大きくなっているケースも珍しくありません。
粉瘤と類似疾患との鑑別
粉瘤と似た症状を示す皮膚疾患はいくつか存在し、正確な診断が重要です。主な類似疾患としては、脂肪腫、石灰化上皮腫、ガングリオン、そして悪性腫瘍などが挙げられます。
- 脂肪腫:脂肪細胞が増殖してできる良性腫瘍で、粉瘤よりも柔らかく、境界が不明瞭なことが多いです。
- 石灰化上皮腫:毛根の細胞に由来する良性腫瘍で、硬く触れるのが特徴です。
- ガングリオン:関節や腱の周囲にできるゼリー状の内容物が入った嚢腫で、手足に多く見られます。
- 悪性腫瘍:非常に稀ですが、皮膚がんなどの悪性腫瘍との鑑別も必要です。急速な増大や潰瘍形成などが見られる場合は注意が必要です。
これらの疾患との鑑別には、視診、触診に加え、超音波検査や病理組織検査が必要となる場合があります。臨床の現場では、視診と触診である程度の判断は可能ですが、確定診断のためには摘出した組織の病理検査が不可欠です。
粉瘤を放置するリスク
粉瘤は良性腫瘍であるため、それ自体が生命を脅かすことはありません。しかし、放置することにはいくつかのリスクが伴います。
- 炎症・感染:粉瘤の袋が破れたり、細菌が侵入したりすると、炎症を起こして赤く腫れ上がり、強い痛みを伴うことがあります。これを「炎症性粉瘤」または「感染性粉瘤」と呼び、膿が溜まることもあります。
- 巨大化:内容物が溜まり続けることで、徐々にサイズが大きくなることがあります。特に背中など、気づきにくい部位ではかなり大きくなってから受診される方もいらっしゃいます。
- 悪性化:非常に稀ではありますが、長期間放置された粉瘤が悪性化して皮膚がんになるケースも報告されています。これは極めて稀なケースですが、念頭に置いておくべきリスクです。
これらのリスクを避けるためにも、粉瘤が気になる場合は早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療方針を相談することが重要です。特に、急に大きくなった、痛みがある、赤く腫れてきたといった変化が見られた場合は、速やかに受診してください。
粉瘤(アテローム)の手術と治療法

粉瘤の治療は、主に外科的な切除が基本となります。炎症の有無や粉瘤の大きさ、部位によって最適な治療法が選択されます。
- 粉瘤の治療法とは
- 粉瘤の治療は、内容物が詰まった袋ごと完全に摘出する外科手術が原則です。炎症を起こしている場合は、まず炎症を抑える処置を行い、その後改めて根治手術を検討します。
粉瘤の治療方針:炎症の有無が重要
粉瘤の治療方針を決定する上で、最も重要なのが「炎症の有無」です。炎症を起こしていない粉瘤と、炎症を起こしている粉瘤では、治療のアプローチが大きく異なります。
- 炎症がない粉瘤:痛みや赤みがない場合は、袋ごと完全に切除する根治手術が可能です。この場合、傷跡を最小限に抑えるための工夫ができます。
- 炎症がある粉瘤:赤く腫れて痛みがある場合は、まず抗生物質の内服や、切開して膿を出す処置(排膿処置)を行います。炎症が落ち着いてから、改めて根治手術を行うのが一般的です。炎症が強い状態で無理に袋ごと切除しようとすると、炎症によって組織が脆くなっているため、袋が破れて内容物が周囲に広がり、再発や感染のリスクが高まる可能性があります。臨床の現場では、炎症性粉瘤の患者さまにはまず炎症を抑える治療から始めることを丁寧に説明しています。
炎症が強い場合は、切開排膿のみで一時的に症状が改善することもありますが、袋が残っている限り再発のリスクがあるため、最終的には袋の完全摘出が推奨されます。
日帰り手術の選択肢とメリット
多くの粉瘤は、局所麻酔下での日帰り手術が可能です。これは患者さまにとって大きなメリットとなります。
- 身体的負担の軽減:全身麻酔が不要なため、体への負担が少なく、術後の回復も比較的早いです。
- 時間的負担の軽減:入院の必要がなく、手術当日に帰宅できるため、日常生活への影響が最小限に抑えられます。仕事や学業を休む期間も短縮できます。
- 経済的負担の軽減:入院費用がかからないため、総医療費を抑えることができます。
当院では、患者さまのライフスタイルに合わせて、可能な限り日帰り手術をご提案しています。ただし、粉瘤の大きさや部位、患者さまの全身状態によっては、入院での手術が必要となる場合もありますので、医師と十分に相談することが大切です。
粉瘤の外科的切除術:主な方法
粉瘤の外科的切除術には、主に以下の方法があります。
- メスによる切開・摘出術(くり抜き法を含む):
- 切開摘出術:粉瘤の皮膚を紡錘形(ひし形)に切開し、粉瘤の袋ごと周囲の組織から剥がして摘出する方法です。最も一般的な方法で、再発のリスクが低いとされています。
- くり抜き法(へそ抜き法):粉瘤の中央に小さな穴を開け、そこから内容物を絞り出した後、残った袋を特殊な器具でくり抜く方法です。傷跡が小さく済むメリットがありますが、炎症が強い場合や粉瘤が大きい場合には適応できないことがあります。
- レーザー治療:
- 炭酸ガスレーザーなどを用いて粉瘤に穴を開け、内容物を除去し、その後レーザーで袋を焼灼する方法です。傷跡が目立ちにくいという利点がありますが、再発のリスクがやや高まる可能性や、病理検査が困難になる場合があるため、適応は慎重に検討されます。
いずれの方法も、術後は傷口を縫合し、経過観察を行います。縫合の方法や抜糸の時期は、粉瘤の大きさや部位、患者さまの体質によって異なります。実際の診療では、患者さまの粉瘤の状態や希望、そして傷跡への配慮を総合的に考慮し、最適な術式を提案しています。特に顔面など目立つ部位の粉瘤では、傷跡の残りにくさを重視した「くり抜き法」を選択することが多いです。
粉瘤の手術は、良性腫瘍であるものの、まれに再発する可能性があります。特に袋が完全に摘出されなかった場合や、炎症が強い状態で手術を行った場合に再発のリスクが高まります。術後の経過観察を怠らず、異常を感じたらすぐに医療機関を受診してください。
手術後の経過と注意点
手術後の経過は、粉瘤の大きさや部位、術式によって異なりますが、一般的には以下の点に注意が必要です。
- 痛みと腫れ:術後数日間は、軽度の痛みや腫れが生じることがあります。処方された鎮痛剤を服用し、必要に応じて患部を冷やすことで症状を和らげることができます。
- 感染予防:傷口を清潔に保ち、医師の指示に従って消毒や軟膏塗布を行ってください。入浴やシャワーについては、医師の許可があるまで控えるか、患部を濡らさないように注意が必要です。
- 抜糸:通常、手術後1〜2週間程度で抜糸を行います。抜糸までの期間は、激しい運動や患部に負担がかかる動作は避けるようにしてください。
- 傷跡:手術である以上、完全に傷跡が残らないということはありませんが、当院では可能な限り目立ちにくい傷跡になるよう、皮膚のしわの方向に沿った切開や丁寧な縫合を心がけています。術後数ヶ月から1年程度かけて、傷跡は徐々に目立たなくなっていきます。
治療を始めて数ヶ月ほどで「傷跡がほとんど気にならなくなった」とおっしゃる方が多いです。しかし、傷跡の治り方には個人差があるため、術後のケアや定期的な診察が重要になります。
まとめ

粉瘤(アテローム)は、皮膚の下にできる良性腫瘍であり、放置すると炎症や感染、巨大化のリスクを伴います。治療の基本は、内容物が詰まった袋ごと完全に摘出する外科手術です。炎症の有無によって治療方針が異なり、炎症がない場合は直接切除、炎症がある場合はまず炎症を抑える処置から始めます。
多くの粉瘤は局所麻酔による日帰り手術が可能であり、身体的・時間的・経済的負担を軽減できるメリットがあります。手術方法には、メスによる切開摘出術(くり抜き法を含む)や、一部のケースでレーザー治療が選択されます。術後は、痛みや腫れ、感染に注意し、医師の指示に従って適切なケアを行うことが重要です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、専門医に相談することをお勧めします。
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