- ✓ 乳児湿疹とおむつかぶれは、乳幼児に多く見られる皮膚トラブルです。
- ✓ それぞれ原因が異なり、適切なスキンケアと治療が重要です。
- ✓ 症状に応じた保湿やステロイド外用薬の使用、生活習慣の改善が治療の柱となります。
乳児の皮膚トラブル:乳児湿疹とおむつかぶれの原因と治療

乳児の皮膚は非常にデリケートであり、様々な外部刺激や体質によって湿疹やかぶれといった皮膚トラブルを起こしやすい特徴があります。特に「乳児湿疹」と「おむつかぶれ」は、多くの乳幼児が経験する一般的な皮膚疾患です。
乳児湿疹とは?その原因と症状
乳児湿疹は、生後数週間から数ヶ月の乳児の顔や頭、体などに現れる湿疹の総称です。医学的には「乳児脂漏性湿疹」や「アトピー性皮膚炎」など、いくつかの種類が含まれます。当院では、初診時に「赤ちゃんの顔がカサカサして、かゆそうにしている」と相談される患者さまも少なくありません。
乳児湿疹の主な原因は何ですか?
乳児湿疹の原因は多岐にわたりますが、主に以下の要因が考えられます。
- 皮脂の過剰分泌: 生後間もない赤ちゃんは、母親のホルモンの影響で皮脂腺の働きが活発になり、皮脂が過剰に分泌されることがあります。これが毛穴を詰まらせ、炎症を引き起こすことがあります。
- 乾燥: 乳児の皮膚は大人に比べてバリア機能が未熟で、乾燥しやすい傾向があります。乾燥によって皮膚のバリア機能が低下すると、外部からの刺激を受けやすくなり、湿疹が悪化することがあります。
- アレルゲン: 食物アレルゲンやダニ、ハウスダストなどの環境アレルゲンが関与している場合もあります。特にアトピー性皮膚炎の乳児では、これらのアレルゲンが症状を悪化させる一因となることがあります[1]。
- 汗や汚れ: 汗やミルクの吐き戻し、よだれなどが皮膚に残ることで、刺激となり湿疹を引き起こすことがあります。
乳児湿疹の症状は?
乳児湿疹の症状は、その種類によって異なりますが、一般的には以下のような症状が見られます。
- 赤みとかゆみ: 顔や頭、首、関節のくびれなどに赤みが生じ、かゆみを伴うことが多いです。
- カサカサ、ジュクジュク: 乾燥して皮膚がカサカサしたり、ひどくなると小さな水ぶくれができ、破れてジュクジュクしたりすることもあります。
- フケのようなもの: 頭皮や眉毛などに黄色っぽいフケのようなかさぶたが付着することもあります(脂漏性湿疹の特徴)。
おむつかぶれとは?その原因と症状
おむつかぶれ(おむつ皮膚炎)は、おむつが触れる部分の皮膚に起こる炎症です。臨床の現場では、特に離乳食が始まる頃に便の性状が変化し、おむつかぶれが悪化するケースをよく経験します。
おむつかぶれの主な原因は何ですか?
おむつかぶれは、おむつ内の高温多湿な環境と、尿や便に含まれる刺激物質が主な原因となります[2]。
- 尿や便による刺激: 尿中のアンモニアや便中の酵素が皮膚を刺激し、炎症を引き起こします。特に下痢をしている時や、おむつの交換回数が少ない場合に悪化しやすいです。
- 摩擦: おむつと皮膚が擦れることで物理的な刺激となり、皮膚のバリア機能が損なわれます。
- 高温多湿: おむつの中は通気性が悪く、高温多湿になりやすい環境です。この環境は皮膚のふやけ(浸軟)を招き、刺激に対する感受性を高めます[3]。
- カンジダ菌の増殖: 高温多湿な環境は、カビの一種であるカンジダ菌が増殖しやすい条件でもあります。カンジダ菌による感染が合併すると、通常の治療では改善しにくくなります。
おむつかぶれの症状は?
おむつかぶれの症状は、おむつが当たる部分に限定して現れるのが特徴です。
- 赤み: お尻や股の付け根、性器の周りなどに赤みが生じます。
- ブツブツ、ただれ: 小さなブツブツができたり、ひどくなると皮膚がただれて皮膚が剥がれたりすることもあります。
- 痛み、かゆみ: 赤ちゃんが不快感を示したり、おむつ交換時にお風呂で泣いたりすることがあります。
おむつかぶれとアトピー性皮膚炎は、おむつが触れる部位では症状が異なることがあります。おむつで覆われている部分はアトピー性皮膚炎の症状が軽度であるという報告もあります[4]。自己判断せず、症状が続く場合は専門医に相談しましょう。
乳児湿疹とおむつかぶれの治療法は?
乳児湿疹とおむつかぶれは、適切なスキンケアと薬物療法を組み合わせることで改善が期待できます。実際の診療では、お子さまの皮膚の状態やライフスタイルに合わせて、個別の治療計画を立てることが重要なポイントになります。
基本的なスキンケア
どちらの皮膚トラブルにおいても、スキンケアは治療の基本です。
- 清潔に保つ: 毎日、刺激の少ないベビーソープをよく泡立てて優しく洗い、ぬるま湯でしっかりと洗い流します。ゴシゴシ擦らず、泡で包み込むように洗いましょう。おむつかぶれの場合は、排泄のたびにシャワーで洗い流すか、お湯で濡らしたコットンなどで優しく拭き取ると良いでしょう。
- 保湿: 入浴後や洗顔後は、すぐに(5分以内が目安)保湿剤を塗布します。乳児の皮膚は乾燥しやすいため、ワセリンやローション、クリームなど、お子さまに合った保湿剤をたっぷりと塗って、皮膚のバリア機能を補強します。
- 通気性を保つ: おむつかぶれの場合は、こまめにおむつを交換し、おむつ内の蒸れを防ぎます。可能であれば、おむつを外して短時間「おむつなし」の時間を作り、お尻を乾燥させるのも効果的です。
薬物療法
症状が改善しない場合や炎症が強い場合には、医師の診断のもとで薬物療法が行われます。
- ステロイド外用薬
- 皮膚の炎症を抑える効果の高い薬です。強さのランクがあり、お子さまの年齢や症状、部位に合わせて適切な強さのものが処方されます。医師の指示に従い、正しく使用することが重要です。
- 非ステロイド性抗炎症薬
- ステロイド外用薬より作用は穏やかですが、炎症を抑える効果があります。軽度の場合や、ステロイド外用薬の使用を控えたい場合などに用いられることがあります。
- 抗真菌薬
- おむつかぶれでカンジダ菌の感染が疑われる場合に処方されます。専用の薬を使用することで、真菌の増殖を抑え、症状の改善を目指します。
治療を始めて数週間〜数ヶ月ほどで「赤ちゃんの肌がきれいになって、機嫌も良くなった」とおっしゃる方が多いです。症状が改善しても、再発防止のために保湿などのスキンケアは継続することが大切です。
乳児湿疹とおむつかぶれの予防策は?
日々の生活の中で、以下の点に注意することで、乳児湿疹やおむつかぶれの予防につながります。
- 適切な入浴と保湿: 毎日入浴させ、清潔にした後すぐに保湿剤を塗る習慣をつけましょう。
- 衣類の選択: 汗を吸いやすい綿素材の衣類を選び、汗をかいたらこまめに着替えさせましょう。
- 室温・湿度の管理: 室内を快適な温度(20〜25℃)と湿度(50〜60%)に保つことで、皮膚の乾燥や汗による刺激を軽減できます。
- おむつのこまめな交換: おむつかぶれ予防には、濡れたらすぐに交換することが最も重要です。
| 項目 | 乳児湿疹 | おむつかぶれ |
|---|---|---|
| 主な原因 | 皮脂過剰、乾燥、アレルゲン、汗 | 尿・便の刺激、摩擦、高温多湿 |
| 好発部位 | 顔、頭、首、関節のくびれなど全身 | おむつが触れる部分(お尻、股) |
| 症状 | 赤み、かゆみ、カサカサ、ジュクジュク | 赤み、ブツブツ、ただれ、痛み |
| 治療の基本 | 清潔、保湿、ステロイド外用薬など | 清潔、乾燥、おむつ交換、薬物療法 |
まとめ

乳児湿疹とおむつかぶれは、乳幼児期に多く見られる皮膚トラブルですが、それぞれ原因や症状に特徴があります。適切なスキンケアと、必要に応じた薬物療法を組み合わせることで、症状の改善と予防が期待できます。ご家庭での日々のケアが非常に重要ですが、症状が改善しない場合や悪化する場合には、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。専門医と相談しながら、お子さまのデリケートな肌を守りましょう。
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よくある質問(FAQ)
- Neill Peters, Anju T Peters. Atopic dermatitis.. Allergy and asthma proceedings. 2020. PMID: 31690388. DOI: 10.2500/aap.2019.40.4265
- M C Schanzer, J K Wilkin. Diaper dermatitis.. American family physician. 1982. PMID: 6461232
- Yalçın Tüzün, Ronni Wolf, Süleyman Bağlam et al.. Diaper (napkin) dermatitis: A fold (intertriginous) dermatosis.. Clinics in dermatology. 2016. PMID: 26051065. DOI: 10.1016/j.clindermatol.2015.04.012
- Aria Jazdarehee, Jason Lee, Richard Lewis et al.. Potential Mechanisms of the Sparing of Atopic Dermatitis in the Diaper Region: A Scoping Review.. Journal of cutaneous medicine and surgery. 2022. PMID: 35317630. DOI: 10.1177/12034754221088533
