- ✓ マスクネはマスクによる摩擦、湿気、皮脂増加、細菌増殖が主な原因です。
- ✓ 正しいスキンケア、マスクの選択と交換、生活習慣の見直しが予防と改善に繋がります。
- ✓ 症状が改善しない場合は、皮膚科専門医への相談と適切な治療が重要です。
マスク着用が日常的になった現代において、「マスクネ」という言葉を耳にする機会が増えました。マスクネとは、マスクの着用によって引き起こされるニキビや肌荒れの総称です。この現象は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、医療従事者を含む多くの人々で報告されており[1]、皮膚科の診察でも「マスクを着けてからニキビがひどくなった」と相談される患者さまが少なくありません。
マスクネとは?その定義と一般的なニキビとの違い

マスクネとは、マスクの長期的な着用が原因で発生する、顔の皮膚トラブル、特にニキビ(尋常性ざ瘡)やそれに類似した吹き出物の総称を指します。医学用語としては「マスク誘発性ざ瘡」や「メカニカルアクネ」とも呼ばれます。一般的なニキビと同様に、毛穴の詰まり、皮脂の過剰分泌、アクネ菌の増殖が関与していますが、マスクネはマスクが作り出す特殊な環境が症状を悪化させる点が特徴です[2]。
通常のニキビは、ホルモンバランスの乱れ、遺伝、ストレス、食生活などが主な要因となることが多いですが、マスクネはこれらに加えて、マスクによる物理的な刺激や環境変化が直接的な引き金となります。臨床の現場では、普段ニキビに悩まされていなかった方が、マスク着用後に急に顎や口周りにニキビができ始めたというケースをよく経験します。
- 尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)
- 一般的に「ニキビ」と呼ばれる皮膚疾患で、毛穴の詰まり、皮脂の過剰分泌、アクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖、炎症が主な原因で発生します。思春期に多く見られますが、成人でも発生することがあります。
マスクネと他の皮膚疾患との鑑別は?
マスク着用によって悪化する皮膚トラブルはニキビだけではありません。湿疹、接触皮膚炎、酒さ(しゅさ)などもマスクによって誘発されたり悪化したりすることがあります。例えば、マスクの素材に対するアレルギー反応や、マスク内の湿気による刺激で湿疹が生じるケースもあります。当院では、マスク着用部位の赤みや痒みを訴える患者さまに対し、単なるニキビだけでなく、これらの鑑別診断も念頭に置いて診察を行っています。自己判断せずに、症状が続く場合は皮膚科医に相談することが重要です。
マスクネができてしまう主な原因とは?
マスクネの発生には複数の要因が複合的に関与しています。マスクが肌に与える物理的・環境的ストレスが、ニキビ形成のメカニズムを加速させるのです。特に、マスクで覆われる部分の皮膚は、通常の環境とは異なる状態に置かれます。実際の診療では、これらの原因を患者さまに説明し、それぞれの要因に対する対策を立てることが重要なポイントになります。
1. 摩擦による物理的刺激
マスクが顔に触れることで生じる摩擦は、皮膚のバリア機能を低下させる大きな原因となります。特に、マスクがずれたり、話したりする際に生じる微細な摩擦は、角質層を傷つけ、炎症を引き起こしやすくします。この物理的刺激は、毛穴の入り口を塞ぎやすくし、ニキビの初期段階である面皰(めんぽう)の形成を促進します[3]。当院では、マスクの縁が当たる頬骨や顎のラインに沿ってニキビができている患者さまが多くいらっしゃいます。
2. 湿度と温度の上昇
マスク内部は、呼気によって湿度と温度が高まります。この高温多湿な環境は、皮膚の常在菌であるアクネ菌(Cutibacterium acnes)やマラセチア菌などの増殖に適しています。アクネ菌はニキビの主な原因菌であり、その増殖は炎症性ニキビの発生に直結します。また、湿度の変化は皮膚の水分蒸発を促し、乾燥を引き起こすこともあります。マスクを外した際に急激に水分が蒸発することで、肌のバリア機能が低下し、外部刺激に敏感になることがあります。
3. 皮脂の過剰分泌
マスク内部の高温多湿な環境は、皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を促進する可能性があります。過剰な皮脂は毛穴を詰まらせる原因となり、アクネ菌の栄養源ともなるため、ニキビの発生リスクを高めます。特に、Tゾーン(額、鼻)やUゾーン(顎、口周り)は皮脂腺が多いため、マスクによる影響を受けやすい部位です。
4. 毛穴の詰まり
摩擦による角質層の乱れ、過剰な皮脂、そしてマスク内の湿気は、毛穴の出口を塞ぎやすくします。これにより、皮脂が毛穴の中に滞留し、面皰(コメド)が形成されます。面皰は白ニキビや黒ニキビとして現れ、これが進行すると炎症を伴う赤ニキビへと悪化します。マスク着用は、この毛穴の詰まりを複合的に引き起こすため、ニキビが悪化しやすいのです。
マスクネは、単なる一時的な肌荒れと軽視されがちですが、放置すると炎症が慢性化し、ニキビ跡として残る可能性があります。早期の対策と適切なケアが重要です。
マスクネの予防と改善のためのスキンケア対策

マスクネの予防と改善には、日々のスキンケアが非常に重要です。マスク着用による肌への負担を軽減し、肌のバリア機能を維持するための適切なケアを実践しましょう。治療を始めて1ヶ月ほどで「肌のザラつきが減った」「新しいニキビができにくくなった」とおっしゃる方が多いです。
1. 正しい洗顔方法
洗顔は、過剰な皮脂や汚れ、雑菌を除去し、毛穴の詰まりを防ぐための基本です。しかし、洗いすぎは肌の乾燥を招き、バリア機能を低下させるため逆効果です。
- 朝晩2回、優しく洗顔: 刺激の少ない洗顔料をよく泡立て、肌をこすらないように優しく洗います。
- ぬるま湯を使用: 熱すぎるお湯は皮脂を奪いすぎるため、32〜34℃程度のぬるま湯で洗い流します。
- 清潔なタオルで拭く: 洗顔後は清潔なタオルでポンポンと押さえるように水分を拭き取ります。
特にマスクを長時間着用した日は、帰宅後に一度軽く洗顔することで、マスク内の蒸れや汗による刺激を洗い流すのも効果的です。
2. 十分な保湿ケア
マスク内の湿度は高いですが、マスクを外した際の急激な乾燥や摩擦によって、肌は乾燥しやすくなります。保湿は肌のバリア機能を保ち、外部刺激から肌を守るために不可欠です。
- 化粧水で水分補給: 洗顔後すぐに、肌に優しい化粧水でしっかりと水分を補給します。
- 乳液やクリームで蓋をする: 水分が蒸発しないよう、乳液やクリームで油分を補い、潤いを閉じ込めます。ニキビができやすい方は、ノンコメドジェニック(ニキビができにくい処方)の製品を選ぶと良いでしょう。
3. メイクの工夫
マスク着用時は、できるだけ肌への負担を減らすメイクを心がけましょう。
- ベースメイクは薄く: ファンデーションを厚塗りすると毛穴を塞ぎやすくなります。気になる部分だけコンシーラーを使用したり、パウダーファンデーションに切り替えたりするのも良いでしょう。
- ノンコメドジェニック製品を選ぶ: メイクアップ製品も、ニキビができにくい処方のものを選ぶことが推奨されます。
- ポイントメイクを主役に: マスクで隠れない目元に重点を置くことで、肌への負担を減らしつつメイクを楽しむことができます。
4. 日焼け止めも忘れずに
マスクをしていても、紫外線は透過します。また、マスクで覆われていない部分との境目で日焼けムラができることもあります。日焼け止めは、肌のバリア機能を守り、炎症後の色素沈着(ニキビ跡)を防ぐためにも重要です。ノンコメドジェニックで、肌に優しいタイプを選びましょう。
マスクの選び方と正しい着用方法
マスク自体が肌に与える影響は大きいため、適切なマスクの選択と着用方法もマスクネ対策には欠かせません。当院では、患者さまの肌質や生活スタイルに合わせて、マスクの選び方についてもアドバイスしています。
1. マスクの素材選び
マスクの素材は、肌への刺激や通気性に大きく影響します。肌に優しい素材を選ぶことが重要です。
| 素材の種類 | 特徴 | マスクネへの影響 |
|---|---|---|
| 綿(コットン) | 肌触りが良く、通気性・吸湿性に優れる。 | 摩擦刺激が少なく、蒸れにくい。敏感肌におすすめ。 |
| 絹(シルク) | 非常に滑らかな肌触り。保湿性も高い。 | 摩擦刺激が最も少ない。高価だが肌への優しさは抜群。 |
| 不織布 | 飛沫防止効果が高い。素材によっては肌触りが硬いものも。 | 摩擦刺激や通気性が課題となる場合がある。内側にガーゼを挟むなどの工夫が有効。 |
| ウレタン | 軽量でフィット感が高い。 | 通気性が良くない場合があり、蒸れやすいことがある。 |
不織布マスクを使用する際は、肌に触れる面にガーゼやシルクのインナーマスクを挟むことで、摩擦を軽減し、吸湿性を高めることができます。
2. マスクのサイズとフィット感
マスクのサイズが合っていないと、摩擦が増えたり、隙間から外気が入り込んで乾燥を招いたりします。顔にフィットしつつも、きつすぎないサイズを選びましょう。特に、耳にかけるゴムの締め付けが強いと、耳周りや顎のラインに刺激を与えやすいので注意が必要です。
3. マスクの清潔を保つ
使用済みのマスクには、汗、皮脂、雑菌が付着しています。これらを放置すると、肌トラブルの原因となります。
- 使い捨てマスクは毎日交換: 不織布マスクは一日一枚を基本とし、汚れたり湿ったりしたらすぐに交換しましょう。
- 布マスクは毎回洗濯: 布マスクは使用するたびに、肌に優しい洗剤で洗い、しっかりと乾燥させてから使用します。
4. マスクを外すタイミング
可能な範囲でマスクを外す時間を設けることも重要です。例えば、人との距離が確保できる場所や、会話をしない一人での作業中など、マスクを外して肌を休ませる時間を作りましょう。これにより、マスク内の蒸れを解消し、肌の呼吸を促すことができます。
マスクネを悪化させないための生活習慣

スキンケアやマスク選びだけでなく、日々の生活習慣も肌の状態に大きく影響します。特にニキビができやすい体質の方は、生活習慣を見直すことでマスクネの悪化を防ぎ、改善を促すことができます。
1. バランスの取れた食事
食生活は肌の健康と密接に関わっています。特定の食品が直接ニキビの原因となるという明確なエビデンスは少ないものの、一般的に以下の点に注意すると良いでしょう。
- 糖質・脂質の摂りすぎに注意: 血糖値を急激に上昇させる高GI食品や、脂質の多い食事は、皮脂の過剰分泌を促す可能性があります。
- ビタミン・ミネラルを積極的に摂取: ビタミンB群は皮脂の分泌をコントロールし、ビタミンCは抗酸化作用やコラーゲン生成をサポートします。亜鉛などのミネラルも肌の健康維持に重要です。野菜、果物、海藻類などをバランス良く摂りましょう。
2. 十分な睡眠
睡眠不足はホルモンバランスを乱し、肌のターンオーバー(新陳代謝)を阻害します。質の良い睡眠を確保することは、肌の再生と修復を促し、ニキビの治りを早めるために不可欠です。夜更かしを避け、規則正しい睡眠習慣を心がけましょう。
3. ストレスマネジメント
ストレスは自律神経やホルモンバランスに影響を与え、皮脂の分泌を増やしたり、肌の免疫力を低下させたりすることがあります。適度な運動、趣味、リラクゼーションなど、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。臨床の現場では、ストレスが溜まるとマスクネが悪化するという患者さまも多く、心身のケアも重要だと実感しています。
4. 適度な運動
適度な運動は血行を促進し、新陳代謝を高めます。また、ストレス解消にも繋がり、肌の健康維持に役立ちます。ただし、運動でかいた汗をそのままにしておくと、肌への刺激となることがあるため、運動後は速やかにシャワーを浴びるか、清潔なタオルで汗を拭き取るようにしましょう。
マスクネの治療法と皮膚科への相談時期
セルフケアで改善が見られない場合や、症状が悪化している場合は、早めに皮膚科を受診することが重要です。皮膚科では、症状の程度や原因に応じて、適切な治療法を提案できます。初診時に「市販薬を試したけど良くならない」と相談される患者さまも少なくありませんが、専門的な治療によって早期改善が期待できます。
1. 外用薬による治療
マスクネの治療には、一般的なニキビ治療に用いられる外用薬が効果的です。主な薬剤としては以下のようなものがあります。
- ディフェリンゲル(アダパレン): 毛穴の詰まりを改善し、面皰の形成を抑制します。
- ベピオゲル(過酸化ベンゾイル): アクネ菌の殺菌作用と、ピーリング作用により毛穴の詰まりを改善します。
- 抗菌薬(クリンダマイシン、ナジフロキサシンなど): 炎症性のニキビに対して、アクネ菌の増殖を抑える目的で使用されます。
- ステロイド外用薬: 強い炎症を伴う場合に一時的に使用されることがありますが、長期使用は避けるべきです。
2. 内服薬による治療
炎症が強い場合や、広範囲にニキビが広がっている場合には、外用薬と併せて内服薬が処方されることがあります。
- 抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど): アクネ菌を殺菌し、炎症を抑えます。
- ビタミン剤(ビタミンB群、ビタミンCなど): 皮脂の分泌を調整したり、肌の代謝をサポートしたりする目的で処方されることがあります。
3. ケミカルピーリングやレーザー治療
難治性のニキビやニキビ跡に対しては、ケミカルピーリングやレーザー治療などの自費診療も選択肢となります。ケミカルピーリングは、古い角質を除去し、肌のターンオーバーを促進することで、毛穴の詰まりを改善します。レーザー治療は、炎症後の赤みや色素沈着、凹凸のあるニキビ跡の改善に効果が期待できます。最近では、ボツリヌス毒素製剤がマスクネに有効である可能性も示唆されており、今後の研究が期待されます[4]。
4. 皮膚科への相談時期はいつ?
以下のような場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
- セルフケアを続けても症状が改善しない、または悪化している場合
- 赤みや腫れが強く、痛みがある炎症性のニキビが多い場合
- ニキビ跡が残るのが心配な場合
- マスクネ以外の皮膚疾患(湿疹、酒さなど)が疑われる場合
当院では、患者さま一人ひとりの肌の状態やライフスタイルに合わせた治療計画を立て、ニキビの根本的な改善を目指します。ニキビ治療に関する詳細情報もございますので、ご参照ください。
まとめ
マスクネは、マスク着用が日常化した現代において多くの人が経験する皮膚トラブルです。マスクによる摩擦、湿気、皮脂の増加、細菌の増殖が主な原因となり、一般的なニキビと同様のメカニズムで発生・悪化します。予防と改善のためには、正しいスキンケア(優しく洗顔し、しっかり保湿する)、肌に優しい素材のマスクを選び、清潔に保つこと、そしてバランスの取れた生活習慣を送ることが重要です。セルフケアで改善が見られない場合や、症状が悪化する場合は、早めに皮膚科を受診し、適切な診断と治療を受けることを強くお勧めします。皮膚科では、外用薬や内服薬、場合によってはケミカルピーリングなどの専門的な治療を通じて、マスクネの改善をサポートします。
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よくある質問(FAQ)
- Advika Dani, Amarachi Eseonu, Kristin Bibee. Risk factors for the development of acne in healthcare workers during the COVID-19 pandemic.. Archives of dermatological research. 2023. PMID: 36357553. DOI: 10.1007/s00403-022-02434-z
- Ayla Hadžavdić, Zrinka Bukvić Mokos. Maskne: A New Entity in the COVID-19 Pandemic.. Acta dermatovenerologica Croatica : ADC. 2022. PMID: 34990343
- Emily Rudd, Sarah Walsh. Mask related acne (“maskne”) and other facial dermatoses.. BMJ (Clinical research ed.). 2021. PMID: 34099456. DOI: 10.1136/bmj.n1304
- Alena Roessle, Stefanie Gluecklich, Martina Kerscher et al.. Efficacy of Incobotulinumtoxin A on Maskne: Evaluation in a Prospective, Single-Center, Placebo-Controlled, Double-Blind Study.. Journal of cosmetic dermatology. 2025. PMID: 40847901. DOI: 10.1111/jocd.70391
- ペリオクリン(ミノサイクリン)添付文書(JAPIC)