- ✓ 水虫の治療には、症状に応じた抗真菌薬の適切な選択と、完治までの継続が不可欠です。
- ✓ 自己判断での治療中断は再発の大きな原因となるため、医師の指示に従いましょう。
- ✓ 足の清潔保持、乾燥、靴や靴下の管理など、日常生活での予防策が再発防止に繋がります。
水虫(足白癬)は、白癬菌というカビの一種が足の皮膚に感染して起こる病気です。かゆみや皮むけ、水ぶくれなどの症状を引き起こし、放置すると爪や体の他の部位に広がることもあります。正しい治療法を理解し、再発を防ぐための対策を講じることが重要です。
水虫とは?その原因と症状

水虫は、皮膚糸状菌(白癬菌)と呼ばれる真菌が、足の皮膚の角質層に寄生することで発症する感染症です。高温多湿な環境を好む白癬菌は、特に足の指の間や足の裏に繁殖しやすく、日本人の約5人に1人が罹患しているとも言われています[3]。当院では、初診時に「足がかゆくて皮がむけている」「足の裏がガサガサする」といった症状を訴える患者さまが多くいらっしゃいます。
水虫の原因は?
水虫の主な原因は、白癬菌が皮膚に付着し、適切な環境下で増殖することです。白癬菌は、感染者の足の皮膚から剥がれ落ちた角質片の中に存在し、共同で使うバスマット、スリッパ、プールサイドなどを介して他者に感染することがあります。また、靴の中が蒸れて湿度が高くなることや、足の洗い方が不十分であることも感染リスクを高めます。
- 白癬菌(はくせんきん)
- 皮膚の角質層に含まれるケラチンというタンパク質を栄養源とする真菌(カビ)の一種です。足や爪、体、股部など、体の様々な部位に感染し、白癬症を引き起こします。
水虫の主な症状は?
水虫の症状は、そのタイプによって異なります。主なタイプは以下の通りです。
- 趾間型(しかんがた)水虫: 足の指の間に発症しやすく、ジュクジュクしたり、皮がむけたり、赤みやかゆみを伴うことがあります。最も一般的なタイプです。
- 小水疱型(しょうすいほうがた)水虫: 足の裏や縁に小さな水ぶくれ(小水疱)ができるタイプです。強いかゆみを伴うことが多く、水ぶくれが破れると皮がむけます。
- 角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)水虫: 足の裏やかかとを中心に皮膚が厚く硬くなり、ひび割れを起こすタイプです。かゆみは少ないことが多いですが、症状が進行すると痛みを感じることもあります。かかと水虫
- 爪白癬(つめはくせん): 白癬菌が爪に感染したもので、爪が白く濁ったり、厚くなったり、変形したりします。治療が難しく、内服薬が必要となることが多いです。爪水虫
臨床の現場では、複数のタイプの水虫が同時に見られるケースもよく経験します。特に角質増殖型はかゆみが少ないため、単なる乾燥や荒れと自己判断して放置してしまう患者さまも少なくありません。
水虫の正しい治療法とは?市販薬と医療機関での治療の違い

水虫の治療は、症状のタイプや重症度によって異なります。市販薬で対処できる場合もありますが、医療機関での正確な診断と適切な治療が完治への近道です。特に、自己判断で症状を悪化させてしまうケースも散見されます。
市販薬での治療
軽度な水虫であれば、市販の抗真菌薬(外用薬)で改善が期待できることもあります。市販薬には、テルビナフィン、ブテナフィン、ルリコナゾールなどの成分が含まれており、これらは白癬菌の増殖を抑えたり、殺菌したりする効果があります[1]。しかし、市販薬を使用する際には以下の点に注意が必要です。
- 診断の正確性: かゆみや皮むけは水虫以外の皮膚疾患(湿疹、接触皮膚炎など)でも起こるため、自己判断で水虫薬を使用すると症状が悪化する可能性があります。
- 治療期間の短縮: 症状が改善したからといって、自己判断で薬の使用を中断すると、菌が完全に死滅せず再発の原因となります。
- 効果の限界: 爪白癬や角質増殖型水虫など、外用薬だけでは効果が期待しにくいタイプの水虫もあります。
市販薬を使用する前に、一度皮膚科医の診察を受けることを強く推奨します。正しい診断に基づいた治療が、早期完治と再発防止に繋がります。
医療機関での治療
医療機関では、まず皮膚の一部を採取して顕微鏡で白癬菌の有無を確認し、正確な診断を行います。その上で、患者さまの症状やライフスタイルに合わせた治療法を提案します。実際の診療では、菌の検出だけでなく、患者さまの足の状態、他の疾患の有無なども総合的に判断することが重要なポイントになります。
外用薬(塗り薬)
最も一般的な治療法で、白癬菌に効果のある抗真菌薬を直接患部に塗布します。医療機関で処方される外用薬は、市販薬よりも有効成分の濃度が高かったり、浸透性が高かったりする場合があります。主な有効成分には、テルビナフィン、ブテナフィン、ルリコナゾールなどがあります。
- テルビナフィン: 白癬菌の細胞膜合成を阻害し、殺菌的に作用します。優れた抗真菌活性を持ち、多くの水虫治療薬に用いられています[5]。
- ブテナフィン: テルビナフィンと同様に細胞膜合成を阻害するアリルアミン系薬剤で、高い抗真菌作用が報告されています[6]。
- ルリコナゾール: 新しいイミダゾール系抗真菌薬で、皮膚への貯留性が高く、持続的な効果が期待できます[4]。
外用薬は、症状が消えても最低1ヶ月は継続して塗布することが推奨されます。白癬菌は症状がなくなった後も皮膚の奥に残っていることが多く、途中でやめると再発しやすいためです。臨床経験上、治療を始めて2〜3ヶ月ほどで「もう治ったから塗らなくてもいいかと思った」とおっしゃる方が多いですが、菌の完全な排除には根気強い継続が必要です。
内服薬(飲み薬)
外用薬では効果が不十分な場合や、爪白癬、角質増殖型水虫、広範囲にわたる水虫の場合には、内服薬が検討されます。内服薬は体の内側から白癬菌に作用するため、外用薬が届きにくい部位にも効果を発揮します。主な内服薬には以下のものがあります。
- テルビナフィン塩酸塩: 爪白癬の第一選択薬の一つで、高い有効性が報告されています。通常、数ヶ月間の服用が必要です。
- イトラコナゾール: パルス療法(一定期間服用し、休薬期間を設ける方法)で用いられることもあり、爪白癬にも効果的です。
内服薬は肝機能障害などの副作用のリスクがあるため、定期的な血液検査で肝機能などを確認しながら治療を進めます。医師の指示に厳密に従い、自己判断で服用を中断しないことが重要です。
| 項目 | 外用薬(塗り薬) | 内服薬(飲み薬) |
|---|---|---|
| 適用範囲 | 趾間型、小水疱型など比較的軽度な水虫 | 爪白癬、角質増殖型、広範囲の水虫、外用薬で効果不十分な場合 |
| 治療期間 | 症状改善後も1ヶ月以上継続(数ヶ月) | 数ヶ月〜1年程度 |
| 主な副作用 | 皮膚刺激、かゆみ、かぶれなど | 肝機能障害、胃腸症状、薬物相互作用など |
| 注意点 | 自己判断での中断は再発の原因 | 定期的な血液検査が必要、他の薬剤との併用に注意 |
水虫の再発防止策とは?日常生活でできること
水虫は治療によって症状が改善しても、白癬菌が完全に死滅していなければ再発しやすい病気です。特に、日本の高温多湿な気候は白癬菌の増殖に適しており、一度治っても再感染のリスクが常に存在します。臨床の現場では、治療が完了した患者さまに対して、再発防止のための生活習慣の改善を強く指導しています。これは治療と同じくらい重要なステップと言えます。
足の清潔と乾燥を保つ
白癬菌は湿った環境を好むため、足の清潔と乾燥を保つことが最も基本的な予防策です。
- 毎日足を洗う: 石鹸をよく泡立て、足の指の間まで丁寧に洗いましょう。ゴシゴシ洗いすぎると皮膚を傷つけ、バリア機能を低下させる可能性があるため、優しく洗うことが大切です。
- 入浴後はしっかり乾燥させる: 洗った後は、タオルで足の指の間や足の裏の水分を丁寧に拭き取ります。ドライヤーの冷風を利用して完全に乾燥させるのも効果的です。
靴と靴下の選び方・管理
靴や靴下は、足の湿度と温度に大きく影響します。適切な選び方と管理が再発防止に繋がります。
- 通気性の良い靴を選ぶ: 革靴やブーツなど、通気性が悪い靴は長時間履き続けないようにしましょう。サンダルやメッシュ素材の靴など、通気性の良いものを選ぶことが望ましいです。
- 靴を毎日同じものを履かない: 毎日同じ靴を履くと、靴の中に湿気がこもりやすくなります。複数の靴を交互に履き、履かない日は風通しの良い場所でしっかり乾燥させましょう。
- 吸湿性の高い靴下を選ぶ: 綿や麻、吸湿速乾性のある機能性素材の靴下を選びましょう。ナイロンなどの化学繊維は蒸れやすいため避けるのが賢明です。靴下は毎日交換し、清潔なものを着用します。
家庭内での感染対策
家族間での感染を防ぐことも、再発防止には欠かせません。
- バスマットの共有を避ける: バスマットは白癬菌が付着しやすい場所です。家族と共用せず、個人用のものを使用するか、毎日洗濯して乾燥させましょう。
- スリッパの共有を避ける: スリッパも感染源となることがあります。個人用のものを用意し、定期的に清掃・消毒しましょう。
- 床を清潔に保つ: 白癬菌は床に落ちた角質片に潜んでいます。こまめに掃除機をかけたり、床を拭いたりして清潔を保ちましょう。
これらの対策は、白癬菌の増殖を抑え、再感染のリスクを低減するために非常に重要です。特に、家庭内に水虫の患者さまがいる場合は、家族全員で感染対策に取り組むことが推奨されます。
水虫治療中の注意点とよくある疑問

水虫治療を成功させるためには、いくつかの注意点を守り、疑問を解消しておくことが重要です。治療を始めて数ヶ月ほどで「もうかゆくないから大丈夫」とおっしゃる方が多いですが、症状の改善と完治は異なります。この段階での自己判断による中断が、再発の最も大きな原因です。
治療を途中でやめても大丈夫?
水虫の症状が改善しても、皮膚の奥にはまだ白癬菌が残っている可能性があります。症状がなくなったからといって自己判断で治療を中断すると、残存する菌が再び増殖し、高確率で再発します。医療機関での治療の場合、医師の指示に従い、処方された薬を指示された期間、継続して使用することが非常に重要です。外用薬であれば、症状が消えてからさらに1ヶ月程度は塗り続けることが推奨されます[2]。
市販薬で治らない場合はどうすればいい?
市販薬を一定期間(例えば2週間程度)使用しても症状が改善しない場合や、悪化する場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。水虫以外の皮膚疾患である可能性や、市販薬では効果が期待できないタイプの水虫である可能性が考えられます。特に、爪白癬や角質増殖型水虫は、市販の外用薬だけでは治りにくい傾向にあります。
水虫は自然治癒する?
水虫が自然治癒することは極めて稀です。白癬菌は皮膚の角質層に寄生するため、特別な治療をしない限り、菌が自然にいなくなることはほとんどありません。放置すると症状が悪化したり、他の部位や家族に感染を広げたりするリスクが高まります。早期に適切な治療を開始することが肝心です。
治療中に温泉やプールに入っても大丈夫?
水虫治療中に温泉やプールに入ることは、他の人への感染リスクや、自身の症状悪化のリスクを考慮すると、避けるのが賢明です。特に、症状が顕著な場合は、入浴施設などの公共の場での利用は控えるべきでしょう。症状が改善し、医師から許可が出てから利用するようにしてください。
妊娠中や授乳中でも治療できる?
妊娠中や授乳中の水虫治療については、使用できる薬剤が限られる場合があります。特に内服薬は胎児や乳児への影響を考慮し、慎重に選択する必要があります。必ず事前に医師に相談し、安全な治療法を選択してもらいましょう。
まとめ
水虫は、白癬菌というカビの一種が足の皮膚に感染して起こる病気であり、かゆみ、皮むけ、水ぶくれなどの症状を引き起こします。正しい治療には、皮膚科医による正確な診断と、症状に応じた抗真菌薬の適切な使用が不可欠です。市販薬での対処も可能ですが、自己判断は誤診や再発のリスクを高めるため、医療機関の受診が推奨されます。治療においては、症状が改善しても自己判断で薬の使用を中断せず、医師の指示に従い完治まで継続することが極めて重要です。再発防止のためには、足の清潔と乾燥を保つこと、通気性の良い靴や吸湿性の高い靴下を選ぶこと、そして家庭内での感染対策を徹底することが効果的です。これらの正しい知識と対策を実践することで、水虫の完治と再発防止を目指しましょう。
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よくある質問(FAQ)
- Rachel Kang, Shari Lipner. Consumer preferences of antifungal products for treatment and prevention of tinea pedis.. The Journal of dermatological treatment. 2019. PMID: 30661432. DOI: 10.1080/09546634.2019.1572862
- K Uchida, M Kudoh, H Yamaguchi. [A study on effectiveness of treatment and prevention of relapse using topical administration of terbinafine in a guinea pig model for tinea pedis].. The Japanese journal of antibiotics. 1995. PMID: 7807700
- J Lambert, B Richert, B Dezfoulian et al.. [Epidemiology, physiopathology and treatment of a frequent ailment: tinea pedis].. Revue medicale de Liege. 2000. PMID: 10823006
- Hiroyasu Koga, Yasuko Nanjoh, Tetsuo Toga et al.. Luliconazole Retention in Stratum Corneum and Prevention of Fungal Infection in a Guinea Pig Tinea Pedis Model.. Journal of drugs in dermatology : JDD. 2016. PMID: 26741388
- テルビナフィン(テルビナフィン)添付文書(JAPIC)
- ボレー(ブテナフィン)添付文書(JAPIC)
