③部位別カスタム(あごだけ強め・頬は低刺激など)

結論

ニキビ治療では、顔全体を同じ強さ・同じ使い方で治療する必要はありません。実臨床では、あご・頬・フェイスラインなど、部位ごとにニキビの原因や皮膚の反応性が異なります。当院では、BPO濃度、レチノイドの強さや頻度、保湿の組み込み方を部位ごとに調整するオーダーメイド処方を行っています。

特徴

部位別カスタムには、次のような特徴があります。

・同じ顔でも部位ごとの皮膚特性を考慮できる

・刺激が出やすい部位で治療を中断しにくい

・治らない原因を「部位差」から見直せる

・ガイドライン治療を無理なく継続しやすい

ニキビが治らない理由は、成分ではなく、「部位に合っていない使い方」であることも少なくありません。

対象

この記事は、次のような方を想定しています。

・あごだけニキビが治らない

・頬は刺激に弱く赤くなりやすい

・顔全体に同じ薬を塗るとトラブルが出る

・保険治療を使っているが安定しない

注意

部位別カスタムは、特別な治療や即効性を狙う方法ではありません。

・処方内容が部位ごとに異なる

・使い分けに慣れるまで時間がかかる

・途中で調整が入ることがある

自己判断で部位を入れ替えたり、量を変えることは避けてください。

なぜ部位ごとに治療を分ける必要があるのか

顔の皮膚は、一見すると同じように見えても、部位ごとに皮脂量、角層の厚み、刺激への耐性が大きく異なります。ニキビ治療では、顔全体を一律に扱うのではなく、それぞれの部位が持つ特徴を前提に治療設計を行う必要があります。特にニキビができやすい部位には、

・皮脂分泌が多い部位

・マスクや髪、手指などによる摩擦を受けやすい部位

・ホルモンの影響を受けやすい部位

・刺激に弱く赤みが出やすい部位

が混在しています。ガイドラインでは、成分そのものの有効性は示されていますが、「顔のどこに、どの強さで使うか」までは細かく規定されていません。実臨床では、同じ成分・同じ濃度を顔全体に使うことで、一部の部位だけに刺激が集中し、結果として治療が続かなくなるケースも少なくありません。

そのため当院では、成分を変える前に、まず部位ごとの差を意識した調整を行います。

あご・フェイスラインを強めに調整するケース

あごやフェイスラインは、

・皮脂腺が比較的発達している

・ホルモンの影響を受けやすい

・同じ場所にニキビを繰り返しやすい

といった特徴があります。この部位では、外用治療に対する反応が鈍く、「治ってもまた出てくる」と感じやすい傾向があります。そのため実臨床では、

・BPOを2.5〜5%でしっかり使用する

・レチノイドも基本量を維持する

・炎症が目立つ場合は配合剤を選択する

といった、やや積極的な設計を行うことが多くなります。一方で、刺激が出にくいからといって最初から一気に強い使い方をすると、赤みやヒリヒリ感が遅れて出現したり、炎症後色素沈着(PIH)の原因になることもあります。

そのため、

・隔日投与から開始する

・夜のみ使用に限定する

・赤みが出た場合は一時的に頻度を下げる

など、強さを保ちながらも刺激を管理する調整が重要になります。

頬・目周りを低刺激に調整するケース

頬や目周りは、

・角層が薄い

・皮膚バリア機能が弱い

・刺激に対して赤みが出やすい

という特徴があります。この部位では、成分自体は適切でも、使い方が合わないことでトラブルが起こりやすくなります。そのため、

・BPOは低濃度を選択する

・使用頻度を下げる、または隔日投与とする

・レチノイドは少量から導入する

・保湿を先行または併用する

といった、刺激を最小限に抑えた設計を行います。特にアジア人皮膚では、刺激による炎症後色素沈着(PIH)のリスクが高いため、「しっかり効かせる」よりも「赤みを出さずに続ける」ことが重要になります。頬のニキビが治らない場合でも、実際には刺激で十分に使えていないだけ、というケースも少なくありません。

背中・体幹部を別設計にするケース

背中や体幹部は、

・皮膚が顔より厚い

・塗布範囲が広い

・刺激耐性が比較的高い

といった特徴があります。このため、顔と同じ設計で治療を行うと、「塗りにくい」「続かない」と感じやすくなります。実臨床では、

・BPOをやや積極的に使用する

・ローションやゲル基剤を選択する

・展延性や塗りやすさを優先する

といった、使用感を重視した設計を行います。背中ニキビは、治療そのものよりも塗布の手間が原因で中断されることも多いため、「どう塗るか」まで含めて調整することが重要です。顔と体を同じ処方で治療しようとすると、どちらかが合わなくなり、結果として治療が続かなくなることがあります。

医師からの補足

外来では、ニキビ治療は成分よりも、どこにどう使うかが重要だと説明しています。同じ薬でも、部位を分けて使うだけで、刺激が減り、治療が安定することがあります。治らない場合、強さを上げる前に、部位ごとの差を見直すことが大切です。

やってはいけないNG行動

・顔全体に同じ量を一律に塗る

・刺激が出た部位も我慢して使い続ける

・逆に調子がいい部位だけ自己判断で中止する

・部位別処方を自己流で入れ替える

皮膚科受診の目安

次のような場合は、皮膚科での相談を検討してください。

・あごだけ治らない

・頬だけ赤くなる

・部位によって経過が極端に違う

・同じ治療で限界を感じている

部位別調整で改善する余地があることもあります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 部位ごとに薬を変えるのは一般的ですか?

A.実臨床では珍しいことではありません。

Q2. 面倒になりませんか?

A.最初は慣れが必要ですが、刺激で中断するより続けやすいことが多いです。

Q3. 部位別にBPO濃度を変えても大丈夫ですか?

A.問題ありません。むしろ理にかなった使い方です。

Q4. 頬だけ保湿を多めにしてもいいですか?

A.問題ありません。刺激対策として有効です。

Q5. 自分で部位別に調整してもいいですか?

A.自己判断はおすすめしません。必ず診察で相談してください。

まとめ

あごは、再発しやすいためしっかり効かせる部位頬は、刺激を避けながら慎重に治療する部位部位別カスタムは、ニキビ治療を「続けるため」の設計です。保険治療で治らないと感じた場合でも、部位ごとの差に注目することで、改善の余地があることがあります。

参考

 Guo Keye, Lu Zhongming et al.
Risk Factors of Acne Recurrence After Treatment and Establishment of an Early Warning Model.
Journal of cosmetic dermatology (2025)


Hacinecipoğlu Fatmanur, Öner Ümran
Assessing Skincare Awareness in Acne Vulgaris: A Cross-Sectional Study.
Advances in skin & wound care (2025)

日本皮膚科学会ガイドライン
尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023

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