- ✓ 円形脱毛症は自己免疫疾患であり、遺伝的要因や環境要因が複合的に関与します。
- ✓ 症状は多様で、治療法も病型や重症度に応じて選択されます。
- ✓ 早期診断と適切な治療が、改善への鍵となります。
円形脱毛症の基礎知識

円形脱毛症は、突然、頭皮や体毛の一部が円形や楕円形に脱毛する疾患です。これは自己免疫疾患の一種であり、免疫システムが誤って自身の毛包(毛を生成する組織)を攻撃することで発症します[1]。
円形脱毛症とはどのような病気ですか?
円形脱毛症は、免疫細胞であるTリンパ球が毛根を攻撃し、毛の成長を妨げることで脱毛を引き起こします。この疾患は人種や性別に関わらず発症し、小児から高齢者まで幅広い年齢層に見られますが、特に若年層での発症が多い傾向があります[4]。当院では、初診時に「急に髪の毛がごっそり抜けた」と相談される患者さまも少なくありません。
- 自己免疫疾患
- 自身の免疫システムが、誤って自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまう病気の総称です。円形脱毛症の他にも、関節リウマチや橋本病などが含まれます。
円形脱毛症の主な原因は何ですか?
円形脱毛症の主な原因は、遺伝的要因と環境要因が複雑に絡み合った自己免疫反応と考えられています[2]。具体的な原因は以下の通りです。
- 自己免疫反応: 最も有力な説であり、毛包の周りに炎症性細胞が浸潤し、毛の成長サイクルを阻害します[3]。
- 遺伝的要因: 家族に円形脱毛症の既往がある場合、発症リスクが高まることが知られています。特定の遺伝子(HLA遺伝子など)が関与している可能性が示唆されています[1]。
- 環境要因: ストレスが発症や悪化の引き金となることが臨床的に経験されますが、ストレスそのものが直接的な原因ではなく、免疫システムに影響を与える一因と考えられています。その他、感染症や特定の薬剤なども関与する可能性が指摘されています[3]。
- アトピー性素因: アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などのアトピー性疾患を持つ人に円形脱毛症の発症が多いことが報告されています[4]。
臨床の現場では、患者さまの生活背景や既往歴を詳しく伺うことで、発症の引き金となった可能性のある要因を特定し、治療計画に役立てています。
円形脱毛症の症状は多様ですか?
円形脱毛症の症状は、その病型によって大きく異なります。主な病型と症状は以下の通りです。
- 単発型: 頭部に1ヶ所だけ円形の脱毛斑ができる最も一般的なタイプです。
- 多発型: 複数の脱毛斑が頭部に現れるタイプです。脱毛斑が融合して広範囲になることもあります。
- 蛇行型: 脱毛斑が頭の生え際から後頭部にかけて帯状に広がるタイプで、治療が難しいとされています。
- 全頭型: 頭部全体の毛髪が完全に抜け落ちるタイプです。
- 汎発型: 頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、体毛など全身の毛が抜け落ちる最も重症なタイプです。
これらの病型は、発症から数ヶ月で自然治癒することもありますが、進行性の場合は専門的な治療が必要となります[2]。診察の中で、患者さまの脱毛の範囲や進行度を正確に把握することが、適切な治療方針を立てる上で重要なポイントになります。
円形脱毛症は、見た目の変化だけでなく、精神的な負担も大きい疾患です。早期に専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
円形脱毛症の治療

円形脱毛症の治療は、病型、脱毛の範囲、年齢、活動性などに応じて多岐にわたります。患者さまの状態を総合的に評価し、最適な治療法を選択することが重要です。
円形脱毛症の治療法にはどのような種類がありますか?
円形脱毛症の治療は、主に免疫反応を抑制し、毛髪の再生を促すことを目的として行われます。代表的な治療法は以下の通りです。
- ステロイド外用療法: 脱毛斑に直接ステロイド薬を塗布し、局所の炎症を抑える方法です。軽症の単発型に用いられることが多いです。
- 局所免疫療法(SADBE/DPCP): 脱毛部にSADBE(スクアリン酸ジブチルエステル)やDPCP(ジフェニルシクロプロペノン)といった化学物質を塗布し、かぶれを起こさせることで、毛包への自己免疫攻撃を抑制する治療法です。広範囲の脱毛や難治性の症例に有効性が期待されます[3]。
- ステロイド局所注射: 脱毛斑に直接ステロイドを注射する方法です。効果は高いですが、皮膚の萎縮などの副作用に注意が必要です。
- ステロイド内服療法: 広範囲の脱毛や急速に進行するタイプに対して、短期間ステロイドを内服することがあります。全身性の副作用のリスクがあるため、慎重な管理が必要です。
- JAK阻害薬: 比較的新しい治療薬で、免疫細胞のシグナル伝達を阻害することで、毛包への攻撃を抑制します。重症の円形脱毛症に対して高い有効性が報告されていますが、費用や副作用の管理が重要です[1]。
- 紫外線療法(PUVA療法): 患部に特定の波長の紫外線を照射する治療法です。
当院では、患者さま一人ひとりの病状やライフスタイルに合わせて、最適な治療計画を提案しています。治療を始めて数ヶ月ほどで「産毛が生えてきた」「脱毛が止まった」とおっしゃる方が多いです。
小児の円形脱毛症の治療は成人と同じですか?
小児の円形脱毛症は成人とは異なる特性を持つことがあり、治療法の選択には特に慎重さが求められます[4]。全身性の副作用を避けるため、まずは局所的な治療から開始することが一般的です。
- ステロイド外用薬: 成人と同様に、軽症の小児にも第一選択として用いられます。
- 局所免疫療法: 小児にも有効性が確認されており、全身性の副作用が少ないため、広範囲の脱毛や難治例に考慮されます[4]。
- JAK阻害薬: 小児に対するJAK阻害薬の使用は、その有効性が期待される一方で、成長期における長期的な安全性データがまだ限られているため、適応は慎重に判断されます。
小児の患者さまの場合、治療と並行して精神的なサポートも非常に重要です。学校生活や友人関係に影響が出ないよう、ご家族と連携しながらきめ細やかなケアを心がけています。
| 治療法 | 主な対象 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ステロイド外用 | 軽症の単発型 | 手軽で副作用が少ない | 広範囲には不向き |
| 局所免疫療法 | 多発型、難治性 | 全身性副作用が少ない | かぶれ、色素沈着 |
| JAK阻害薬 | 重症型、汎発型 | 高い有効性が期待される | 費用、全身性副作用 |
治療期間と予後はどうなりますか?
円形脱毛症の治療期間と予後は、病型や重症度、治療開始時期によって大きく異なります。軽症の単発型であれば、数ヶ月で自然治癒したり、比較的短期間の治療で改善が見られたりすることがあります。しかし、多発型や全頭型、汎発型といった重症型では、治療に長期間を要し、再発を繰り返すことも少なくありません[2]。
特に小児の円形脱毛症の場合、自然治癒の可能性も考慮しつつ、長期的な視点で治療計画を立てることが重要です[4]。実際の診療では、患者さまの回復をサポートするために、定期的な診察と治療法の見直しを丁寧に行うことを心がけています。
まとめ

円形脱毛症は、自己免疫反応が毛包を攻撃することで発症する疾患であり、その原因には遺伝的要因と環境要因が複雑に絡み合っています。症状は単発型から汎発型まで多様であり、それぞれの病型や重症度に応じて最適な治療法を選択することが重要です。治療法にはステロイド外用薬、局所免疫療法、JAK阻害薬などがあり、近年では新しい治療選択肢も登場しています。特に小児の円形脱毛症では、全身性の副作用を考慮し、局所治療から始めるなど慎重なアプローチが求められます。早期の診断と継続的な治療、そして精神的なサポートが、円形脱毛症の改善と患者さまの生活の質の向上に繋がります。
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- Cheng Zhou, Xiangqian Li, Chen Wang et al.. Alopecia Areata: an Update on Etiopathogenesis, Diagnosis, and Management.. Clinical reviews in allergy & immunology. 2022. PMID: 34403083. DOI: 10.1007/s12016-021-08883-0
- Amos Gilhar, Amos Etzioni, Ralf Paus. Alopecia areata.. The New England journal of medicine. 2012. PMID: 22512484. DOI: 10.1056/NEJMra1103442
- A Sterkens, J Lambert, A Bervoets. Alopecia areata: a review on diagnosis, immunological etiopathogenesis and treatment options.. Clinical and experimental medicine. 2021. PMID: 33386567. DOI: 10.1007/s10238-020-00673-w
- Rebecca Afford, Alexander K C Leung, Joseph M Lam. Pediatric Alopecia Areata.. Current pediatric reviews. 2021. PMID: 32351186. DOI: 10.2174/1573396316666200430084825
