- ✓ 蜂窩織炎は皮膚の深部に細菌が感染して炎症を起こす疾患です。
- ✓ 赤み、腫れ、痛み、熱感が主な症状で、進行すると発熱や悪寒を伴うことがあります。
- ✓ 治療は主に抗菌薬の服用や点滴で行われ、早期の診断と治療が重要です。
蜂窩織炎の基礎知識と治療

蜂窩織炎(ほうかしきえん)は、皮膚の深い部分から皮下組織にかけて細菌が感染し、炎症を引き起こす疾患です。適切な治療を行わないと重症化する可能性もあるため、早期の診断と治療が不可欠です。
蜂窩織炎とは?その定義と原因
蜂窩織炎とは、主に皮膚の真皮深層から皮下脂肪組織にかけて細菌が感染し、炎症を起こす状態を指します[1]。これに対し、丹毒(たんどく)は皮膚の比較的浅い部分(真皮上層)に生じる細菌感染症で、蜂窩織炎と似た症状を示しますが、病変の境界がよりはっきりしていることが多いとされています[4]。
- 蜂窩織炎(ほうかしきえん)
- 皮膚の真皮深層から皮下脂肪組織にかけて細菌が感染し、炎症を起こす状態。境界が不明瞭な赤みや腫れが特徴。
- 丹毒(たんどく)
- 皮膚の真皮上層に細菌が感染し、炎症を起こす状態。蜂窩織炎よりも病変の境界が明瞭で、顔面に生じやすい傾向がある。
原因菌としては、黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌が最も一般的です[1]。これらの細菌は、皮膚の小さな傷、虫刺され、水虫、湿疹、手術痕などから侵入することが多いです。特に、当院では足の水虫を放置した結果、蜂窩織炎を発症される患者さまが多くいらっしゃいます。皮膚のバリア機能が低下している部位は、細菌感染のリスクが高まります。
蜂窩織炎の主な症状とは?
蜂窩織炎の症状は、感染部位や重症度によって異なりますが、典型的な症状は以下の通りです[2]。
- 発赤(赤み):感染部位が赤く腫れ上がります。境界が不明瞭で、徐々に拡大していくことが多いです。
- 腫脹(腫れ):皮膚が盛り上がり、触ると硬く感じることがあります。
- 疼痛(痛み):感染部位に強い痛みや圧痛があります。
- 熱感:患部が熱を持ちます。
- 発熱・悪寒:炎症が全身に及ぶと、発熱、悪寒、倦怠感などの全身症状を伴うことがあります。
臨床の現場では、特に下肢(足やふくらはぎ)に発症するケースをよく経験します。初期には虫刺されと間違えやすいこともありますが、急速に赤みや痛みが広がる場合は蜂窩織炎を疑う必要があります。重症化すると、水ぶくれ(水疱)や膿瘍(のうよう:膿がたまる状態)を形成したり、リンパ管炎や敗血症(全身に細菌が広がる重篤な状態)に進行したりする可能性もあります[1]。
診断はどのように行われる?
蜂窩織炎の診断は、主に患者さまの症状と身体診察に基づいて行われます。医師は患部の視診・触診を行い、特徴的な赤み、腫れ、熱感、痛みの有無を確認します。病変の境界が不明瞭であることや、急速な進行が診断の重要な手がかりとなります。
必要に応じて、以下の検査が行われることもあります。
- 血液検査:白血球数の増加やC反応性タンパク(CRP)の上昇など、炎症の程度を示す数値を確認します。
- 細菌培養検査:重症例や治療に反応しない場合、患部の皮膚や血液から細菌を採取し、原因菌を特定することがあります。これにより、より効果的な抗菌薬を選択できます。
- 画像検査:超音波検査やMRIなどを用いて、膿瘍の形成や骨髄炎(骨の感染症)の合併がないかを確認することもあります。
診察の中で、患者さまが「数日前はただの虫刺されだと思っていたのに、急に腫れてきた」と相談されることも少なくありません。初期症状が軽微であっても、進行が速い場合は専門医の診察を受けることが大切です。
蜂窩織炎の治療法と注意点
蜂窩織炎の治療は、主に抗菌薬(抗生物質)を用いて行われます[2]。原因菌の多くは黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌であるため、これらの細菌に効果のある抗菌薬が選択されます。
抗菌薬による治療
- 軽症の場合:経口抗菌薬(飲み薬)が処方されます。通常、5~14日間程度の服用が推奨されますが、症状の改善度合いによって期間は調整されます。
- 中等症~重症の場合:入院して点滴による抗菌薬投与が必要となることがあります。特に、発熱や悪寒などの全身症状が強い場合、急速に病変が拡大している場合、免疫力が低下している患者さまなどが対象となります。
実際の診療では、抗菌薬を開始して24~48時間で症状の改善が見られることが多いです。治療を始めて数日ほどで「赤みが引いてきて、痛みも楽になった」とおっしゃる方が多いですが、症状が改善しても医師の指示に従い、処方された抗菌薬は最後まで飲み切ることが重要です。途中で服用を中止すると、再発や薬剤耐性菌の出現につながる可能性があります。
その他の治療と管理
- 安静と挙上:患部を安静にし、可能であれば心臓より高い位置に挙上することで、腫れや痛みの軽減が期待できます。
- 冷却:患部を冷やすことで、炎症による熱感や痛みを和らげることができます。
- 鎮痛剤:痛みが強い場合は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛剤が処方されることがあります。
- 基礎疾患の治療:水虫、湿疹、糖尿病などの基礎疾患がある場合は、それらの治療も同時に行うことが再発予防に繋がります。
- 膿瘍形成時の処置:膿瘍が形成された場合は、切開して膿を排出する処置が必要となることがあります。
自己判断で抗菌薬の使用を中断したり、市販薬で済ませようとしたりすることは、症状の悪化や治療の長期化を招く可能性があるため避けてください。特に、糖尿病や免疫不全などの持病がある方は、重症化のリスクが高いため、早めに医療機関を受診することが重要です。
蜂窩織炎の予防策はある?
蜂窩織炎の予防には、皮膚のバリア機能を保ち、細菌の侵入を防ぐことが重要です。以下の点に注意しましょう。
- 皮膚の清潔保持:日常的に皮膚を清潔に保ち、特に傷や湿疹がある場合は丁寧にケアします。
- 傷の適切な処置:切り傷、擦り傷、虫刺されなどは、速やかに消毒し、清潔な絆創膏などで保護します。
- 水虫や湿疹の治療:水虫や湿疹は皮膚のバリア機能を低下させ、細菌の侵入経路となるため、適切に治療することが重要です。
- 保湿ケア:乾燥肌は皮膚のバリア機能を弱めるため、保湿剤で皮膚を保護しましょう。
- 免疫力の維持:バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、全身の免疫力を維持することも大切です。
実際の診療では、一度蜂窩織炎を発症された方が、再発予防のために水虫治療をしっかり行うようになったり、保湿を欠かさず行うようになったりするケースを多く見かけます。特に、むくみやすい体質の方やリンパ浮腫がある方は、皮膚の防御機能が低下しやすいため、より一層の注意が必要です。
| 項目 | 蜂窩織炎 | 丹毒 |
|---|---|---|
| 感染部位 | 真皮深層〜皮下組織[1] | 真皮上層[4] |
| 病変の境界 | 不明瞭 | 比較的明瞭 |
| 主な原因菌 | 黄色ブドウ球菌、溶血性レンサ球菌[1] | 溶血性レンサ球菌[4] |
| 好発部位 | 下肢 | 顔面、下肢 |
| 全身症状 | 発熱、悪寒を伴うことがある[2] | 発熱、悪寒を伴うことが多い[4] |
まとめ

蜂窩織炎は、皮膚の深部に細菌が感染して炎症を起こす疾患であり、赤み、腫れ、痛み、熱感といった局所症状に加え、発熱や悪寒などの全身症状を伴うことがあります。主な原因菌は黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌で、皮膚の小さな傷から侵入することが多いです。診断は主に視診と触診、必要に応じて血液検査などで行われます。治療は抗菌薬の服用または点滴が中心となり、早期に適切な治療を開始することが重要です。症状が改善しても自己判断で治療を中断せず、医師の指示に従い最後まで薬を飲み切ることが再発予防にも繋がります。日頃から皮膚を清潔に保ち、傷のケアや基礎疾患の治療をしっかり行うことで、蜂窩織炎の発症リスクを低減できます。
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よくある質問(FAQ)
- Renajd Rrapi, Sidharth Chand, Daniela Kroshinsky. Cellulitis: A Review of Pathogenesis, Diagnosis, and Management.. The Medical clinics of North America. 2021. PMID: 34059247. DOI: 10.1016/j.mcna.2021.04.009
- Rachel J Bystritsky. Cellulitis.. Infectious disease clinics of North America. 2021. PMID: 33494874. DOI: 10.1016/j.idc.2020.10.002
- Vivek Batra, Alexander Baras. Bilateral cellulitis.. BMJ case reports. 2016. PMID: 26392449. DOI: 10.1136/bcr-2015-211117
- Jean-Marie Bonnetblanc, Christophe Bédane. Erysipelas: recognition and management.. American journal of clinical dermatology. 2003. PMID: 12627991. DOI: 10.2165/00128071-200304030-00002
