【多汗症の原因と治療】|医師が解説する対策法

最終更新日: 2026-04-06
📋 この記事のポイント
  • ✓ 多汗症は過剰な発汗が特徴で、原発性と続発性に分類されます。
  • ✓ 原発性多汗症の明確な原因は不明ですが、遺伝的要因や自律神経の関与が示唆されています。
  • ✓ 治療法は外用薬、内服薬、ボツリヌス療法、手術など多岐にわたり、症状や部位に応じて選択されます。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。

多汗症の基礎知識:原因と種類とは?

手のひらから汗が滴り落ちる様子は、多汗症の症状と原因を象徴的に示しています。
手のひらから滴る汗

多汗症とは、体温調節に必要な範囲を超えて、過剰な量の汗が分泌される状態を指します。この状態は、患者さまの日常生活に大きな影響を与えることが少なくありません。

多汗症は、主に「原発性多汗症」と「続発性多汗症」の2つのタイプに分類されます。臨床の現場では、特に原発性多汗症の患者さまが、手のひらや足の裏、脇の下などの局所的な発汗に悩まされ、初診時に「汗で書類が濡れてしまう」「握手をするのが億劫になる」と相談されるケースをよく経験します。

多汗症の定義と診断基準は?

多汗症は、特定の部位に局所的に過剰な発汗が見られる「局所性多汗症」と、全身に過剰な発汗が見られる「全身性多汗症」に分けられます。特に、原発性局所多汗症は、明らかな原因疾患がないにもかかわらず、局所的に過剰な発汗が6ヶ月以上続き、以下のうち2つ以上の症状が当てはまる場合に診断されます[1]

  • 発汗が両側性かつ対称性である
  • 日常生活に支障をきたしている
  • 週に1回以上の頻度で発汗エピソードがある
  • 25歳未満で発症している
  • 家族歴がある
  • 睡眠中は発汗が止まる

これらの基準は、患者さまの症状を客観的に評価し、適切な治療方針を立てる上で非常に重要です。

原発性多汗症の原因とは?

原発性多汗症の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています[1]

  • 遺伝的要因: 家族歴がある患者さまが多いことから、遺伝的な素因が関与している可能性が指摘されています。ある研究では、原発性多汗症患者の約30〜50%に家族歴が見られると報告されています[1]
  • 自律神経系の関与: 汗腺の活動は自律神経系によって制御されており、特に交感神経が優位になることで発汗が促進されます。原発性多汗症の患者さまでは、この交感神経が過剰に活動していると考えられています。しかし、汗腺自体の数や構造に異常があるわけではありません。
  • 精神的・感情的要因: ストレス、不安、緊張などの精神的な要因が発汗を誘発したり、悪化させたりすることが知られています。これは、自律神経系が感情の影響を受けやすいためです。

これらの要因が複雑に絡み合い、過剰な発汗を引き起こしていると考えられます。当院では、患者さまの生活習慣やストレスレベルについても詳しくヒアリングし、多角的な視点から原因を探るようにしています。

続発性多汗症の原因と鑑別は?

続発性多汗症は、何らかの基礎疾患や薬剤の使用によって引き起こされる多汗症です。原発性多汗症とは異なり、原因となる病気を治療することで症状が改善する可能性があります[1]

続発性多汗症の原因となる主な疾患には、以下のようなものがあります。

  • 内分泌疾患: 甲状腺機能亢進症、糖尿病、褐色細胞腫など。
  • 神経疾患: パーキンソン病、脳卒中、脊髄損傷など。
  • 感染症: 結核、マラリア、HIV感染症など。
  • 悪性腫瘍: リンパ腫、白血病など。
  • 薬剤性: 抗うつ薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、特定のホルモン剤など。

続発性多汗症の鑑別は非常に重要であり、全身性発汗や、発熱、体重減少、動悸などの全身症状を伴う場合は、これらの基礎疾患を疑う必要があります。診察の中で、患者さまの既往歴や服用中の薬剤を詳細に確認することは、適切な診断と治療に繋がる重要なポイントになります。

⚠️ 注意点

多汗症の症状が急に現れたり、全身性の発汗が見られたりする場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診し、基礎疾患の有無を確認することが重要です。

多汗症の治療:効果的な選択肢と方法

多汗症治療の選択肢を示す図。薬物療法や手術など効果的な方法が並んでいます。
多汗症の治療選択肢

多汗症の治療は、患者さまの症状の重症度、発汗部位、ライフスタイル、そして治療への期待に応じて多岐にわたります。当院では、患者さま一人ひとりに最適な治療法を提案できるよう、様々な選択肢を検討しています。

多汗症の治療法にはどのような種類がある?

多汗症の治療法は、大きく分けて保存的治療と外科的治療があります。まずは保存的治療から開始し、効果が不十分な場合に次のステップへと進むのが一般的です[2]

外用薬による治療

外用薬は、多汗症治療の第一選択肢となることが多い治療法です。特に局所性多汗症において効果が期待できます。

  • 塩化アルミニウム製剤: 汗腺の開口部を物理的に塞ぐことで発汗を抑制します。市販薬もありますが、濃度が高いものは医療機関で処方されます。就寝前に塗布し、朝洗い流すのが一般的です。効果は個人差がありますが、多くの患者さまで発汗量の減少が報告されています[3]
  • 抗コリン薬含有外用薬: 汗腺の活動を抑制する作用があります。2020年には、日本で初の原発性腋窩多汗症治療薬として、グリコピロニウム臭化物含有外用薬が承認されました。これは、汗を出す指令を伝えるアセチルコリンという物質の働きをブロックすることで発汗を抑える薬剤です。

内服薬による治療

全身性の多汗症や、外用薬で効果が不十分な場合に検討されるのが内服薬です。

  • 抗コリン薬: 汗腺の活動を抑制する作用があります。全身の発汗を抑える効果が期待できますが、口渇、便秘、排尿障害などの全身性の副作用が現れることがあります。当院では、患者さまの症状の程度や副作用の許容度を慎重に判断し、内服薬の選択を行っています。

ボツリヌス療法

ボツリヌス毒素製剤を皮下に注射することで、汗腺からの発汗を促す神経伝達物質(アセチルコリン)の放出を一時的にブロックし、発汗を抑制します。特に脇の下の多汗症(腋窩多汗症)に高い効果が報告されており、効果は4〜9ヶ月程度持続するとされています[5]。臨床の現場では、治療を始めて数週間で「汗染みを気にせず服を選べるようになった」とおっしゃる方が多いです。手のひらや足の裏にも適用可能ですが、痛みを伴うことがあるため、麻酔を併用することもあります。

イオントフォレーシス

微弱な電流を流した水に、手のひらや足の裏を浸すことで発汗を抑制する治療法です。特に手掌多汗症や足底多汗症に有効とされています。週に数回行い、効果が維持されるよう定期的に続ける必要があります。自宅でできる機器もありますが、医療機関での指導の下で行うことが推奨されます[4]

外科的治療

他の治療法で効果が不十分な場合や、重度の多汗症に対しては、外科的治療が検討されることがあります。

  • 胸腔鏡下交感神経切除術(ETS): 脇の下や手のひらの多汗症に対して行われる手術です。汗腺を刺激する交感神経を切断することで、永続的な効果が期待できます。しかし、代償性発汗(手術部位以外の場所で発汗が増えること)という副作用が高頻度で発生する可能性があり、その程度は予測が難しいため、慎重な検討が必要です[2]
  • 汗腺除去術: 脇の下の多汗症に対して、汗腺を物理的に除去する手術です。吸引法や切除法などがあります。

多汗症の治療法比較:メリットとデメリットは?

多汗症の主な治療法について、そのメリットとデメリットを比較してみましょう。患者さまの症状やライフスタイルに合わせて、最適な治療法を選択することが重要です。

治療法主なメリット主なデメリット・注意点
塩化アルミニウム製剤手軽に試せる、比較的安価、効果が期待できる皮膚刺激(かゆみ、かぶれ)、効果に個人差
抗コリン薬外用薬局所的な効果、全身性副作用が少ない保険適用部位が限られる、効果発現に時間
抗コリン薬内服薬全身性の発汗抑制、効果発現が早い口渇、便秘、排尿障害などの全身性副作用
ボツリヌス療法高い効果、持続期間が長い(数ヶ月)、生活の質の改善費用、注射時の痛み、効果の持続は一時的
イオントフォレーシス非侵襲的、副作用が少ない、自宅で継続可能効果発現に時間がかかる、継続が必要、手足に限定
外科的治療(ETS)永続的な効果が期待できる代償性発汗のリスク、不可逆的、手術のリスク
代償性発汗とは
多汗症の外科的治療(胸腔鏡下交感神経切除術など)後に、手術部位の発汗は減少する一方で、背中、胸、腹部、太ももなど、他の部位で発汗が増加する現象を指します。これは、体温調節機能が他の部位で代償的に働くために起こると考えられています。その程度は個人差が大きく、患者さまの生活の質に影響を与えることがあります。

どの治療法を選択するかは、医師と十分に相談し、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で決定することが重要です。当院では、患者さまの具体的な困りごとや期待する効果を詳しくお伺いし、最も適した治療計画を一緒に立てることを重視しています。

まとめ

多汗症の悩みを持つ人が専門医に相談する様子。治療への希望と安心感を表します。
医師に相談する患者

多汗症は、体温調節の必要を超えて過剰な汗をかく状態であり、原発性多汗症と続発性多汗症に分類されます。原発性多汗症の明確な原因は不明ですが、遺伝的要因や自律神経系の過活動が関与していると考えられています。一方、続発性多汗症は基礎疾患や薬剤が原因となるため、鑑別診断が重要です。

治療法は多岐にわたり、外用薬、内服薬、ボツリヌス療法、イオントフォレーシス、そして外科的治療などがあります。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあり、患者さまの症状の重症度、発汗部位、ライフスタイル、治療への期待に応じて最適な選択肢が異なります。専門医と相談し、ご自身の状態に合った治療法を見つけることが、多汗症による悩みを軽減し、生活の質を向上させる鍵となります。

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よくある質問(FAQ)

多汗症は遺伝するのでしょうか?
原発性多汗症の患者さまの約30〜50%に家族歴が見られると報告されており、遺伝的な要因が関与している可能性が指摘されています[1]。ただし、必ずしも遺伝するわけではありません。
多汗症の診断はどのように行われますか?
主に問診と身体診察によって行われます。過剰な発汗が6ヶ月以上続き、特定の診断基準(例:両側性・対称性の発汗、日常生活への支障など)のうち2つ以上を満たす場合に原発性多汗症と診断されます[1]。必要に応じて、基礎疾患の有無を確認するための検査が行われることもあります。
ボツリヌス療法はどのような効果がありますか?
ボツリヌス毒素製剤を注射することで、汗腺からの発汗を促す神経伝達物質の放出をブロックし、発汗を抑制します。特に脇の下の多汗症に高い効果が報告されており、効果は4〜9ヶ月程度持続するとされています[5]
多汗症の治療には保険が適用されますか?
多汗症の治療には、保険が適用されるものとされないものがあります。例えば、塩化アルミニウム製剤や一部の抗コリン薬外用薬、ボツリヌス療法(特定の部位や重症度による)などは保険適用となる場合があります。治療法によって保険適用の範囲が異なるため、受診時に医師や医療機関にご確認ください。
この記事の監修医
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倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長