- ✓ 酒さは顔の赤みや血管の拡張を特徴とする慢性的な炎症性皮膚疾患です。
- ✓ 遺伝的要因、免疫系の異常、皮膚の微生物、紫外線、ストレスなどが複雑に関与して発症すると考えられています。
- ✓ 治療法は症状のタイプに応じて内服薬、外用薬、レーザー治療などを組み合わせ、生活習慣の改善も重要です。
酒さの基礎知識

酒さ(しゅさ)とは、主に顔面に赤みや血管の拡張、丘疹(ぶつぶつ)や膿疱(うみをもったぶつぶつ)などが繰り返し現れる慢性的な炎症性皮膚疾患です。特に鼻、頬、額、あごに症状が出やすく、灼熱感やかゆみを伴うこともあります。当院では「顔の赤みがずっと引かない」「ニキビとは違うぶつぶつが繰り返しできる」と相談される患者さまが少なくありません。
- 酒さ(Rosacea)
- 顔面の慢性的な炎症性皮膚疾患で、紅斑(赤み)、毛細血管拡張、丘疹、膿疱などが主な症状です。進行すると鼻瘤(鼻が肥厚する状態)を形成することもあります。
酒さの主な症状とは?
酒さの症状は多岐にわたりますが、主に以下の4つのタイプに分類されます[2]。
- 紅斑性毛細血管拡張型酒さ(Erythematotelangiectatic Rosacea: ETR): 顔面の持続的な赤み(紅斑)と、細い血管が浮き出て見える毛細血管拡張が特徴です。灼熱感やヒリヒリ感を伴うことがあります。
- 丘疹膿疱型酒さ(Papulopustular Rosacea: PPR): 紅斑に加え、ニキビに似た赤いぶつぶつ(丘疹)や膿を持ったぶつぶつ(膿疱)が顔に現れます。思春期ニキビと誤診されることも少なくありませんが、面皰(コメド)がない点で区別されます。
- 鼻瘤型酒さ(Phymatous Rosacea): 鼻の皮膚が厚くなり、でこぼこに変形するタイプです。主に男性に多く見られ、進行すると鼻の形が大きく変わることがあります。
- 眼型酒さ(Ocular Rosacea): 目の充血、乾燥、異物感、まぶたの炎症などが生じます。皮膚症状に先行して現れることもあります。
これらの症状は単独で現れることもあれば、複数組み合わさって現れることもあります。臨床の現場では、特に紅斑性や丘疹膿疱型の患者さまが多く、特に季節の変わり目やストレスが溜まった時に悪化する傾向が見られます。
酒さの原因は何ですか?
酒さの原因はまだ完全に解明されていませんが、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています[1]。主な要因として以下のものが挙げられます。
- 遺伝的要因: 家族歴がある人に発症しやすい傾向があります。
- 免疫系の異常: 皮膚の免疫応答が過剰になることで炎症が引き起こされると考えられています。特に、自然免疫に関わる抗菌ペプチドであるカテリシジンの異常が指摘されています[1]。
- 皮膚の微生物: 顔ダニ(Demodex folliculorum)の異常な増殖や、特定の細菌(Bacillus oleroniusなど)が関与している可能性が示唆されています[1]。これらの微生物が免疫反応を誘発し、炎症を悪化させると考えられています。
- 血管の異常: 顔の血管が拡張しやすく、刺激に対して過敏に反応することが、赤みの原因となります。
- 環境要因と誘発因子: 紫外線、熱い飲み物や辛い食べ物、アルコール、ストレス、激しい運動、特定の化粧品などが症状を悪化させる誘発因子として知られています。
これらの要因が複合的に作用し、皮膚のバリア機能の低下や炎症反応の持続につながると考えられています。診察の中で、患者さまがどのような誘発因子に触れているかを丁寧に聞き取り、それらを避ける指導も重要なポイントになります。
酒さはニキビやアレルギー性皮膚炎と症状が似ていることがありますが、治療法が異なるため自己判断は避け、皮膚科専門医の診断を受けることが重要です。
酒さの治療

酒さの治療は、症状のタイプや重症度に応じて、外用薬、内服薬、レーザー治療などを組み合わせるのが一般的です。治療の目標は、症状をコントロールし、再発を予防することにあります。患者さまの生活の質(QOL)向上を目指し、個々の状態に合わせた治療計画を立てることが重要です。
酒さの治療法にはどのようなものがありますか?
酒さの治療は、主に以下の方法が用いられます。
外用薬治療
軽度から中等度の酒さ、特に紅斑や丘疹・膿疱に対して効果が期待できます[3]。
- メトロニダゾール: 抗菌作用と抗炎症作用を持ち、丘疹や膿疱の改善に用いられます。
- アゼライン酸: 抗菌作用、角質溶解作用、抗炎症作用があり、紅斑、丘疹、膿疱に効果が期待されます。
- イベルメクチン: 顔ダニ(Demodex)の増殖を抑制する効果があり、特に顔ダニが関与している可能性のある丘疹膿疱型酒さに有効です[1]。
- ブリモニジン: 血管収縮作用により、顔の赤みを一時的に軽減する効果があります。
内服薬治療
外用薬で効果が不十分な場合や、中等度から重度の酒さに用いられます。
- テトラサイクリン系抗生物質(ドキシサイクリンなど): 低用量で抗炎症作用を発揮し、丘疹や膿疱の改善に有効です。抗菌作用というよりは、炎症を抑える目的で使用されます。
- イソトレチノイン: 重症の酒さ、特に難治性の丘疹膿疱型や鼻瘤型に対して検討されることがあります。副作用のリスクがあるため、専門医の厳重な管理のもとで使用されます。
レーザー・光治療
特に紅斑や毛細血管拡張型酒さに対して効果的です。当院でも、赤みが強く、外用薬だけでは改善しにくい患者さまには、レーザー治療を提案することがよくあります。
- 色素レーザー(パルス色素レーザー: PDL): 血管内のヘモグロビンに吸収され、異常な血管を選択的に破壊することで赤みを軽減します。
- IPL(Intense Pulsed Light): 広範囲の波長を持つ光を照射し、血管や色素に作用することで赤みや色むらを改善します。複数の研究で、IPLやPDLが酒さの赤みや血管病変の改善に有効であることが示されています[4]。
| 治療法 | 主な対象症状 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| メトロニダゾール(外用) | 丘疹、膿疱、軽度紅斑 | 抗炎症、抗菌作用 |
| イベルメクチン(外用) | 丘疹、膿疱(顔ダニ関連) | 顔ダニの抑制、抗炎症 |
| ドキシサイクリン(内服) | 中等度~重度丘疹、膿疱 | 抗炎症作用 |
| 色素レーザー/IPL | 紅斑、毛細血管拡張 | 血管の収縮・破壊、赤み軽減 |
日常生活でできる対策はありますか?
酒さの治療においては、薬物療法だけでなく、日常生活でのスキンケアや誘発因子の回避が非常に重要です。臨床の現場では、治療を始めて数ヶ月ほどで「赤みが落ち着いてきた」「肌の調子が良くなってきた」とおっしゃる方が多いですが、その多くは適切なスキンケアと誘発因子の管理を継続されている方々です。
- 紫外線対策: 日焼け止め(SPF30以上、PA+++以上推奨)を毎日使用し、帽子や日傘で物理的に紫外線を避けることが重要です。
- 刺激の少ないスキンケア: 敏感肌用の低刺激性の洗顔料や保湿剤を選び、優しく洗顔・保湿を行います。アルコールや香料、メントールなどが含まれる製品は避けるようにしましょう。
- 誘発因子の回避: 熱い飲み物、辛い食べ物、アルコール、カフェイン、ストレス、急激な温度変化などを避けるよう心がけます。日記をつけて、ご自身の誘発因子を特定するのも有効です。
- ストレス管理: ストレスは酒さを悪化させる要因の一つです。リラックスできる時間を作る、適度な運動をするなど、ストレスを軽減する方法を見つけることが大切です。
これらの対策を継続することで、症状の悪化を防ぎ、治療効果を高めることが期待できます。自己判断で治療を中断せず、定期的に医師の診察を受け、適切なアドバイスに従うことが大切です。
まとめ

酒さは顔の赤みやぶつぶつ、血管の拡張などを特徴とする慢性的な皮膚疾患であり、遺伝的要因、免疫系の異常、皮膚の微生物、環境要因などが複雑に絡み合って発症すると考えられています。症状は紅斑性、丘疹膿疱型、鼻瘤型、眼型に分類され、それぞれ異なる特徴を持ちます。
治療法は、外用薬(メトロニダゾール、アゼライン酸、イベルメクチンなど)、内服薬(テトラサイクリン系抗生物質など)、そしてレーザー・光治療(色素レーザー、IPL)など多岐にわたります。これらの治療法は、症状のタイプや重症度に応じて選択され、組み合わせて用いられることが多いです。
薬物療法や物理療法に加え、日常生活での紫外線対策、刺激の少ないスキンケア、誘発因子の回避、ストレス管理といったセルフケアも酒さの症状をコントロールし、再発を予防するために非常に重要です。酒さは長期的な管理が必要な疾患ですが、適切な診断と治療、そして日々のケアによって症状の改善が期待できます。顔の赤みや肌荒れでお悩みの方は、皮膚科専門医にご相談ください。
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- Fengjuan Yang, Lian Wang, Deyu Song et al.. Signaling pathways and targeted therapy for rosacea.. Frontiers in immunology. 2024. PMID: 39351216. DOI: 10.3389/fimmu.2024.1367994
- Esther J van Zuuren, Bernd W M Arents, Mireille M D van der Linden et al.. Rosacea: New Concepts in Classification and Treatment.. American journal of clinical dermatology. 2021. PMID: 33759078. DOI: 10.1007/s40257-021-00595-7
- Michelle T Pelle, Glen H Crawford, William D James. Rosacea: II. Therapy.. Journal of the American Academy of Dermatology. 2005. PMID: 15389184. DOI: 10.1016/j.jaad.2004.03.033
- Qianyu Zhai, Shaohang Cheng, Runying Liu et al.. Meta-Analysis of the Efficacy of Intense Pulsed Light and Pulsed-Dye Laser Therapy in the Management of Rosacea.. Journal of cosmetic dermatology. 2024. PMID: 39240125. DOI: 10.1111/jocd.16549
- アネメトロ(メトロニダゾール)添付文書(JAPIC)
- アイファガン(ブリモニジン)添付文書(JAPIC)
