- ✓ ケミカルピーリングは酸性の薬剤を用いて肌の角質を除去し、肌のターンオーバーを促進する治療法です。
- ✓ グリコール酸、サリチル酸マクロゴール、乳酸、TCAなど、様々な種類の薬剤があり、それぞれ作用深度や適応が異なります。
- ✓ 患者さまの肌質(乾燥肌、脂性肌、敏感肌など)や肌の悩み(ニキビ、シミ、毛穴など)に合わせて最適な薬剤と濃度を選択することが重要です。
ケミカルピーリングは、肌表面の古い角質を酸性の薬剤で除去し、肌の再生(ターンオーバー)を促す美容医療の一つです。ニキビ、シミ、くすみ、小じわ、毛穴の開きなど、様々な肌の悩みに対応できる治療として広く知られています。しかし、使用する薬剤の種類や濃度によって効果やリスクが異なるため、ご自身の肌質や悩みに合った適切な選択が非常に重要です。
ケミカルピーリングとは?

ケミカルピーリングとは、肌に酸性の薬剤を塗布することで、古くなった角質層や表皮の一部を剥離させ、肌のターンオーバーを促進する治療法です[1]。これにより、肌の再生が促され、新しい細胞が生成されることで、様々な肌トラブルの改善が期待できます。
この治療の歴史は古く、紀元前にはすでに果物や乳製品に含まれる酸を利用して肌を滑らかにする試みがあったとされています。現代のケミカルピーリングは、皮膚科学の進歩とともに安全かつ効果的な薬剤が開発され、医療機関で専門医の管理のもと行われるようになりました。臨床の現場では、ニキビやニキビ跡で悩む若い患者さまから、シミやくすみ、小じわの改善を希望される中高年の患者さままで、幅広い年齢層の方がこの治療を検討されています。特に、肌のざらつきやゴワつきが気になるという初診の患者さまには、まずケミカルピーリングをご提案することが少なくありません。
- ターンオーバー
- 肌の細胞が一定の周期で生まれ変わるプロセスのことです。表皮の基底層で新しい細胞が作られ、徐々に表面に押し上げられて角質となり、最終的に剥がれ落ちます。この周期が乱れると、肌トラブルの原因となります。
ケミカルピーリングの主な作用
- 角質除去作用: 古い角質や毛穴に詰まった角栓を除去し、肌のざらつきを改善します。
- ターンオーバー促進作用: 肌の細胞再生を促し、新しい健康な肌細胞の生成をサポートします。
- 皮脂分泌抑制作用: 一部の薬剤には皮脂腺に作用し、過剰な皮脂分泌を抑える効果が期待されます。
- 美白作用: メラニン色素を含む古い角質を除去することで、シミやくすみの改善に貢献します。
- コラーゲン生成促進作用: 薬剤の種類によっては、真皮層に作用してコラーゲンやエラスチンの生成を刺激し、肌のハリや弾力アップが期待されます。
ケミカルピーリングで改善が期待できる肌トラブル
- ニキビ・ニキビ跡(色素沈着、軽度の凹凸)
- 毛穴の開き・黒ずみ
- シミ・そばかす・くすみ
- 小じわ・肌のハリの低下
- 肌のざらつき・ゴワつき
ケミカルピーリングの主な種類と特徴とは?
ケミカルピーリングに使用される薬剤は多岐にわたり、それぞれ異なる特性と作用深度を持ちます。患者さまの肌の状態や治療目的に応じて、適切な薬剤を選択することが重要です。当院では、患者さまの肌質や悩みを詳細にヒアリングし、最も効果的かつ安全な薬剤を提案することを心がけています。
1. グリコール酸(AHA)
グリコール酸は、アルファヒドロキシ酸(AHA)の一種で、サトウキビなどから抽出されるフルーツ酸です。分子量が小さいため肌への浸透性が高く、表皮の角質層に作用して古い角質間の結合を緩め、剥離を促します[2]。
- 特徴: 比較的マイルドな作用で、肌のターンオーバー促進、ニキビ、くすみ、小じわの改善に用いられます。
- 適応: 軽度のニキビ、毛穴の詰まり、肌のざらつき、くすみ、乾燥肌を除く一般的な肌質。
- 濃度: 一般的に20〜35%程度の濃度が使用されますが、肌の状態に応じて調整されます。
当院では、初めてケミカルピーリングを受ける方や敏感肌の方には、まずグリコール酸の低濃度から試すことを推奨しています。これにより、肌への刺激を最小限に抑えつつ、効果を実感していただくことが可能です。
2. サリチル酸マクロゴール
サリチル酸マクロゴールは、油溶性のサリチル酸をマクロゴールという基剤に溶かしたピーリング剤です。サリチル酸は角質軟化作用に優れていますが、従来のアルコール溶解型サリチル酸は刺激が強いという欠点がありました。しかし、マクロゴール基剤にすることで、酸が皮膚深部に浸透しすぎるのを防ぎ、角質層のみに作用させることが可能になりました[1]。
- 特徴: 角質層にのみ作用するため、痛みや赤みなどの刺激が少なく、ダウンタイム(治療後の回復期間)が短いのが特徴です。ニキビや毛穴の改善に特に効果が期待されます。
- 適応: ニキビ、ニキビ跡、毛穴の開き・黒ずみ、脂性肌の方。
- 濃度: 一般的に20〜30%の濃度が用いられます。
実際の診療では、特に思春期のニキビに悩む患者さまや、脂性肌で毛穴の詰まりが気になる患者さまにサリチル酸マクロゴールを推奨することが多く、治療を始めて数ヶ月ほどで「肌のベタつきが減った」「ニキビができにくくなった」とおっしゃる方が多いです。
3. 乳酸(AHA)
乳酸もAHAの一種で、牛乳などから抽出されます。グリコール酸よりも分子量が大きく、肌への浸透が穏やかであるため、比較的マイルドな作用が特徴です。保湿効果も期待できるため、乾燥肌や敏感肌の方にも選択肢となり得ます[2]。
- 特徴: 保湿作用を併せ持ち、肌のトーンアップや軽度のくすみの改善に期待が持てます。
- 適応: 乾燥肌、敏感肌、くすみ、肌のトーンアップを希望する方。
4. TCA(トリクロロ酢酸)
TCAは、グリコール酸やサリチル酸マクロゴールよりも作用が深く、中深度から深深度のピーリングに使用される薬剤です。表皮から真皮浅層にまで作用し、より重度のニキビ跡(凹凸)、深いシワ、色素沈着の改善に用いられます[1]。
- 特徴: 強い効果が期待できる反面、ダウンタイムが長く、赤み、腫れ、痂皮(かさぶた)形成などの反応が強く出やすい傾向があります。専門医による慎重な施術と厳重なアフターケアが必要です。
- 適応: 重度のニキビ跡、深いシワ、難治性の色素沈着。
- 濃度: 10%程度の低濃度から、30%以上の高濃度まで幅広く使用されます。
TCAピーリングは、効果が高い一方でリスクも伴うため、当院では患者さまの肌の状態や期待する効果、ダウンタイムの許容範囲を十分に確認した上で、慎重に適用を判断しています。特に、肌の色が濃い方(Fitzpatrick分類でIV型以上)では、炎症後色素沈着のリスクが高まることが報告されており[3]、より一層の注意が必要です。
5. その他のピーリング剤
- PHA(ポリヒドロキシ酸): グルコノラクトンやラクトビオン酸などが含まれます。AHAに似た構造を持ちますが、分子量が大きく、刺激が少ないのが特徴です。保湿効果も高く、敏感肌の方にも適していると報告されています[4]。
- マッサージピール(PRX-T33): TCA、過酸化水素、コウジ酸を配合した薬剤で、真皮深層に作用してコラーゲン生成を促進し、ハリや弾力アップ、美白効果が期待されます。剥離作用は比較的マイルドで、ダウンタイムが少ないのが特徴です。
- リバースピール: シミ、特に肝斑に特化したピーリングで、複数の薬剤(乳酸、サリチル酸、フィチン酸など)を段階的に塗布することで、メラニン色素にアプローチします。
肌タイプ別のケミカルピーリングの選び方は?

ケミカルピーリングは、肌質や抱えている悩みに合わせて最適な薬剤を選択することが、効果を最大限に引き出し、リスクを最小限に抑える上で非常に重要です。当院では、患者さま一人ひとりの肌の状態を丁寧に診察し、適切な治療計画を立てることを重視しています。
1. 脂性肌・ニキビ肌の方
脂性肌やニキビ肌の患者さまは、過剰な皮脂分泌や毛穴の詰まりが主な原因でニキビが発生しやすい傾向にあります。このタイプの肌には、皮脂分泌を抑制し、毛穴の角栓を除去する作用に優れたピーリング剤が適しています。
- 推奨薬剤: サリチル酸マクロゴール、グリコール酸
- 理由: サリチル酸マクロゴールは油溶性で毛穴の奥まで浸透し、角栓や皮脂を除去する効果が高いです。グリコール酸もターンオーバーを促進し、ニキビの改善に寄与します。
臨床の現場では、ニキビの炎症が強い場合は、まず炎症を抑える治療を優先し、その後ケミカルピーリングでニキビのできにくい肌環境を整えることを目指します。サリチル酸マクロゴールは、刺激が少ないため、赤ニキビや白ニキビが混在する肌にも比較的安全に適用しやすいと感じています。
2. 乾燥肌・敏感肌の方
乾燥肌や敏感肌の患者さまは、肌のバリア機能が低下していることが多く、刺激に非常に弱い傾向があります。そのため、マイルドな作用で保湿効果も期待できるピーリング剤を選ぶことが重要です。
- 推奨薬剤: 乳酸、PHA(ポリヒドロキシ酸)
- 理由: 乳酸は保湿作用があり、PHAは分子量が大きく浸透が穏やかなため、肌への刺激が少ないとされています[4]。肌のバリア機能を守りながら、穏やかにターンオーバーを促します。
初診時に「肌が弱くて、ピーリングは無理だと思っていました」と相談される患者さまも少なくありません。しかし、適切な薬剤と濃度を選べば、敏感肌の方でも肌質の改善が期待できるケースは多く、診察の中で「肌の潤いが増した」というお声をいただくこともあります。
3. シミ・くすみ・色素沈着が気になる方
シミやくすみ、炎症後色素沈着は、メラニン色素の過剰な生成や排出の遅れが原因です。これらの悩みを改善するには、メラニンの排出を促し、肌のトーンアップを図るピーリング剤が適しています。
- 推奨薬剤: グリコール酸、マッサージピール(PRX-T33)、リバースピール
- 理由: グリコール酸は、古い角質とともにメラニン色素を含む細胞の排出を促進します。マッサージピールやリバースピールは、美白成分を配合しており、シミや肝斑に特化した効果が期待されます。
特に、肝斑の患者さまには、刺激の強いピーリングは悪化させるリスクがあるため、マッサージピールやリバースピールなど、肝斑治療に特化した薬剤を用いることが重要です。また、ケミカルピーリングと合わせて内服薬やレーザートーニングなどの併用療法を検討することで、より高い効果が期待できる場合もあります。
4. 小じわ・肌のハリの低下が気になる方
小じわや肌のハリの低下は、加齢によるコラーゲンやエラスチンの減少、ターンオーバーの遅延が主な原因です。真皮層に作用し、コラーゲン生成を促すピーリング剤が適しています。
- 推奨薬剤: マッサージピール(PRX-T33)、TCA(低濃度)
- 理由: マッサージピールは、真皮層の線維芽細胞を刺激し、コラーゲン生成を促進します。TCAも濃度によっては真皮層に作用し、肌の再生を促すことでハリや弾力の改善が期待されます。
実際の診療では、肌のハリを求める患者さまには、ケミカルピーリング単独ではなく、高周波治療や水光注射など、他の治療との組み合わせを提案することも多く、相乗効果でより良い結果が得られることを実感しています。
ケミカルピーリングの種類別比較表
ケミカルピーリングの主要な薬剤について、その特徴や適応、ダウンタイムなどを比較しました。ご自身の肌の悩みに合わせて、最適な薬剤を選ぶ際の参考にしてください。
| 薬剤名 | 主な成分 | 作用深度 | 主な適応 | ダウンタイム | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| グリコール酸 | AHA(フルーツ酸) | 表皮浅層 | ニキビ、くすみ、小じわ、肌のざらつき | ほぼなし〜軽度 | 最も一般的でマイルド、幅広い肌悩みに対応 |
| サリチル酸マクロゴール | サリチル酸、マクロゴール | 角質層 | ニキビ、脂性肌、毛穴の詰まり | ほぼなし〜軽度 | 刺激が少なく、角質層にのみ作用、ニキビ治療に優れる |
| 乳酸 | AHA | 表皮浅層 | 乾燥肌、敏感肌、くすみ、肌のトーンアップ | ほぼなし〜軽度 | 保湿効果も期待でき、マイルドな作用 |
| TCA | トリクロロ酢酸 | 表皮〜真皮浅層 | 重度のニキビ跡、深いシワ、色素沈着 | 数日〜1週間程度(赤み、腫れ、痂皮) | 効果が高いが、ダウンタイムも長く、専門医による慎重な施術が必要 |
| マッサージピール | TCA、過酸化水素、コウジ酸 | 真皮深層 | 肌のハリ・弾力、美白、小じわ | ほぼなし〜軽度 | 剥離作用が少なく、コラーゲン生成促進効果が高い |
ケミカルピーリングを受ける際の注意点とリスクは?

ケミカルピーリングは効果的な治療法ですが、いくつかの注意点やリスクが存在します。安全に治療を受けるためには、これらの点を十分に理解し、医師と相談することが不可欠です。当院では、施術前に必ず詳細なカウンセリングを行い、患者さまのリスク因子やアレルギー歴などを確認しています。
施術前の注意点
- 日焼け: 施術前後の日焼けは避ける必要があります。日焼けした肌は敏感になっており、ピーリングによる刺激が強くなる可能性があります。
- 他の治療との併用: レーザー治療、脱毛、顔のシェービング、スクラブ洗顔などは、施術の前後で一定期間控える必要があります。
- アレルギー歴・既往歴: 薬剤に対するアレルギーや、ヘルペスなどの皮膚疾患がある場合は、必ず事前に医師に申告してください。
- 妊娠・授乳中: 妊娠中や授乳中の方へのケミカルピーリングは、安全性が確立されていないため、一般的に推奨されません。
考えられるリスクと副作用
- 赤み・ひりつき: 施術中に一時的な赤みやひりつきを感じることがあります。通常は数時間から数日で治まります。
- 乾燥・皮むけ: 施術後、肌が乾燥したり、薄く皮むけが生じたりすることがあります。これは新しい肌への移行過程であり、保湿ケアが重要です。
- 色素沈着: 稀に、炎症後色素沈着が生じることがあります。特に肌の色が濃い方や、施術後の紫外線対策が不十分な場合にリスクが高まる可能性があります[3]。
- アレルギー反応: 非常に稀ですが、薬剤に対するアレルギー反応(かゆみ、発疹など)が生じることがあります。
- ヘルペスの再活性化: 口唇ヘルペスの既往がある場合、ピーリングの刺激で再活性化することがあります。
ケミカルピーリングは医療行為であり、必ず専門の医療機関で医師または医師の指示を受けた看護師が行う必要があります。自己判断での市販品の使用は、肌トラブルの原因となる可能性があるため避けてください。
施術後のケア
施術後の適切なケアは、効果を最大限に引き出し、リスクを低減するために非常に重要です。当院では、施術後に患者さま一人ひとりに合わせた丁寧なアフターケア指導を行っています。
- 保湿: 施術後の肌は非常に乾燥しやすいため、高保湿の化粧水やクリームでしっかりと保湿を行ってください。
- 紫外線対策: ピーリング後の肌は紫外線の影響を受けやすいため、日焼け止め(SPF30以上推奨)を毎日使用し、帽子や日傘などで物理的な遮光も心がけてください。
- 刺激を避ける: 施術後数日間は、スクラブ洗顔、マッサージ、刺激の強い化粧品の使用は控えてください。
- メイク: 薬剤の種類や肌の状態にもよりますが、一般的には施術直後からメイクが可能です。ただし、肌に負担をかけない優しいメイクを心がけましょう。
まとめ
ケミカルピーリングは、肌のターンオーバーを促進し、ニキビ、シミ、くすみ、小じわなど様々な肌トラブルの改善が期待できる効果的な治療法です。グリコール酸、サリチル酸マクロゴール、乳酸、TCAなど多種多様な薬剤があり、それぞれ作用深度や適応が異なります。ご自身の肌質や悩みに合わせて最適な薬剤を選択することが重要であり、特に乾燥肌や敏感肌の方には乳酸やPHA、脂性肌やニキビ肌にはサリチル酸マクロゴールが適している場合があります。治療を検討する際は、必ず専門の医療機関を受診し、医師と十分に相談の上、ご自身の肌の状態に合ったピーリング剤と治療計画を立てることが大切です。適切な施術と丁寧なアフターケアを行うことで、健康で美しい肌を目指すことができるでしょう。
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よくある質問(FAQ)
- Shireen Samargandy, Blake S. Raggio, Alexander Kc Leung et al.. Chemical Peels for Skin Resurfacing. Drugs in context. 2026. PMID: 31613532. DOI: 10.7573/dic.2022-2-5
- Ahmad Abdulrahman Almeman. Evaluating the Efficacy and Safety of Alpha-Hydroxy Acids in Dermatological Practice: A Comprehensive Clinical and Legal Review.. Clinical, cosmetic and investigational dermatology. 2024. PMID: 39050562. DOI: 10.2147/CCID.S453243
- Peter Rullan, Amir M Karam. Chemical peels for darker skin types.. Facial plastic surgery clinics of North America. 2010. PMID: 20206095. DOI: 10.1016/j.fsc.2009.11.010
- Giulia Gentili, Paola Perugini, Stefano Bugliaro et al.. Efficacy and safety of a new peeling formulated with a pool of PHAs for the treatment of all skin types, even sensitive.. Journal of cosmetic dermatology. 2023. PMID: 35796684. DOI: 10.1111/jocd.15215
