- ✓ マスク着用による肌荒れは、摩擦、蒸れ、乾燥が主な原因で、ニキビや接触皮膚炎などを引き起こします。
- ✓ 予防には、肌に優しいマスク選び、正しいスキンケア、適切な保湿が重要です。
- ✓ 症状が改善しない場合は、皮膚科医による適切な診断と治療が必要です。
マスクの着用が日常化したことで、肌荒れに悩む方が増えています。マスクによる肌荒れは、物理的な刺激、湿度変化、衛生環境など複数の要因が複雑に絡み合って発生します。本記事では、マスクによる肌荒れの主な原因、具体的な症状、そして効果的な予防と対策について、エビデンスに基づきながら詳しく解説します。
マスク生活と肌荒れとは?そのメカニズム

マスク生活と肌荒れとは、マスクを長時間着用することによって引き起こされる、皮膚の炎症やトラブルの総称です。そのメカニズムは、主に「物理的な摩擦」「高温多湿な環境」「乾燥」の3つの要因が複合的に作用することで生じます。臨床の現場では、初診時に「マスクをつけ始めてから急に肌の調子が悪くなった」と相談される患者さまも少なくありません。
物理的な摩擦による肌への影響
マスクが顔に触れることで生じる摩擦は、皮膚のバリア機能を低下させる主要な原因の一つです。特に、マスクの縁や鼻、頬骨が当たる部分は、繰り返し擦れることで角質層が傷つきやすくなります。このバリア機能の低下は、外部からの刺激物質やアレルゲンの侵入を容易にし、炎症や赤み、かゆみを引き起こす可能性があります。ある研究では、医療従事者の間でマスク着用による皮膚症状が広く報告されており、特に鼻梁、頬、耳の後ろに圧迫や摩擦による損傷が見られました[3]。当院では、マスクの素材や形状が肌に合わないことで、特定の部位に集中して赤みやかぶれが生じるケースをよく経験します。
高温多湿な環境と細菌繁殖
マスク内部は、呼気によって常に高温多湿な状態に保たれます。この環境は、皮膚の常在菌バランスを崩し、アクネ菌などの細菌が繁殖しやすい状態を作り出します。その結果、ニキビ(尋常性ざ瘡)や毛嚢炎(もうのうえん)といった炎症性の皮膚疾患が悪化するリスクが高まります。韓国の12病院を対象とした調査では、マスク着用による皮膚疾患として、ニキビが最も多く報告されています[5]。また、デンマークの医療従事者における調査でも、ニキビや酒さ(しゅさ)の悪化が確認されています[4]。
- 尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)
- 一般的に「ニキビ」と呼ばれる皮膚疾患で、毛穴の詰まり、皮脂の過剰分泌、アクネ菌の増殖などが原因で発生します。
- 毛嚢炎(もうのうえん)
- 毛穴の奥にある毛包(もうほう)が細菌感染によって炎症を起こす状態です。ニキビと似ていますが、毛嚢炎はアクネ菌以外の細菌が原因となることが多いです。
マスクを外した後の乾燥
マスク内部の湿潤な環境から一転、マスクを外すと水分が急激に蒸発し、肌の乾燥を引き起こします。これは「過乾燥」と呼ばれ、肌の水分保持能力を低下させ、肌荒れを悪化させる要因となります。特に乾燥肌の方は、この急激な湿度変化に肌が対応しきれず、かゆみやひび割れ、粉吹きなどの症状が出やすくなります。マスク着用による有害事象に関するシステマティックレビューでは、皮膚の乾燥やかゆみも一般的な症状として挙げられています[1]。
マスク肌荒れの具体的な症状と見分け方
マスク肌荒れは、多様な症状として現れます。これらの症状を正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。診察の中で、患者さまがご自身の症状を正確に伝えられるよう、具体的な症状とその見分け方について説明します。
ニキビ(尋常性ざ瘡)の悪化
マスク着用による最も一般的な肌荒れの一つが、ニキビの悪化です。マスク内部の高温多湿な環境は、皮脂分泌を促進し、アクネ菌の増殖を助けます。特に、マスクで覆われるUゾーン(顎から口周り)や頬に、赤く炎症を起こしたニキビや白ニキビができやすくなります。既存のニキビがある場合、マスクの摩擦が刺激となり、さらに悪化させることもあります。医療従事者を対象とした研究でも、マスク着用によるニキビの発生は高い割合で報告されています[3]。
接触皮膚炎(かぶれ)
接触皮膚炎は、マスクの素材や加工に使われる化学物質、あるいはマスクに付着した汚れなどが皮膚に触れることでアレルギー反応や刺激反応を起こし、赤み、かゆみ、ブツブツとした湿疹を引き起こす状態です。特に、マスクのゴム紐が当たる耳の裏や、顔の縁の部分に症状が出やすい傾向があります。一部のマスクにはホルムアルデヒドなどのアレルゲンが含まれている可能性も指摘されており、アレルギー性接触皮膚炎の原因となることがあります[2]。当院では、特定のマスクに替えてから症状が出たという患者さまには、パッチテストを提案することもあります。
乾燥とかゆみ
マスク内部の蒸れと、マスクを外した後の急激な乾燥の繰り返しは、肌のバリア機能を著しく低下させ、乾燥とかゆみを引き起こします。肌の表面がカサカサしたり、粉を吹いたり、ひどい場合にはひび割れてしまうこともあります。かゆみが強くなると、無意識に掻きむしってしまい、さらに肌のバリア機能を損ね、症状を悪化させる悪循環に陥ることもあります。システマティックレビューでは、マスク着用による皮膚症状として、乾燥とかゆみが上位に挙げられています[1]。
酒さ(しゅさ)の悪化
酒さは、顔の赤みやほてり、ニキビに似たブツブツなどが特徴的な慢性炎症性疾患です。マスク内部の高温多湿な環境や摩擦は、酒さの症状を悪化させる要因となることが知られています。マスクによる蒸れが血管拡張を誘発し、赤みを増強させたり、炎症性の皮疹を悪化させたりする可能性があります。デンマークの医療従事者における調査でも、酒さの悪化が報告されています[4]。
| 症状 | 主な原因 | 特徴的な見分け方 |
|---|---|---|
| ニキビ | 皮脂過剰、アクネ菌増殖、毛穴詰まり | 赤く腫れたり、芯のあるブツブツ、白や黒のコメド |
| 接触皮膚炎 | マスク素材への刺激・アレルギー、摩擦 | マスクが触れる部分の赤み、かゆみ、小さな水ぶくれ、カサカサ |
| 乾燥・かゆみ | バリア機能低下、急激な湿度変化 | 肌のつっぱり感、粉吹き、細かなシワ、引っ掻き傷 |
| 酒さの悪化 | 血管拡張、炎症、高温多湿 | 顔全体の持続的な赤み、ほてり、ニキビに似た赤いブツブツ |
マスク肌荒れの予防策とは?

マスク肌荒れを未然に防ぐためには、日々の生活習慣やスキンケアを見直すことが重要です。適切な予防策を講じることで、肌への負担を軽減し、健康な状態を保つことができます。実際の診療では、予防が何よりも重要なポイントになります。
肌に優しいマスク選びと正しい着用方法
マスク選びは肌荒れ予防の第一歩です。肌への刺激が少ない素材を選ぶことが大切です。
- 素材の選択: 綿やシルクなどの天然素材は通気性が良く、肌触りが柔らかいため、摩擦による刺激を軽減できます。不織布マスクを使用する場合は、内側にガーゼやシルクのインナーマスクを挟むのも効果的です。
- サイズの確認: 顔のサイズに合ったマスクを選ぶことで、不必要な摩擦や圧迫を防ぎます。大きすぎると隙間から外気が入り込み乾燥を招き、小さすぎると締め付けや摩擦が強くなります。
- こまめな交換: 汚れたマスクや湿ったマスクは細菌繁殖の原因となるため、定期的に新しいものに交換しましょう。特に汗をかいたり、マスクが濡れたりした場合は、早めに交換することが推奨されます。
また、マスクの正しい着用方法も重要です。鼻と口をしっかり覆いながらも、顔に強く押し付けすぎないように調整し、ゴム紐の締め付けも緩すぎずきつすぎない程度にしましょう。
適切なスキンケア習慣
マスク着用時の肌はデリケートな状態にあるため、スキンケアはより丁寧に行う必要があります。
- 洗顔: 刺激の少ない弱酸性の洗顔料を使用し、泡で優しく洗いましょう。ゴシゴシ擦ることは避け、ぬるま湯で丁寧にすすぎます。朝晩の2回が基本ですが、汗をかいた場合は追加で洗顔しても良いでしょう。
- 保湿: 洗顔後はすぐに保湿をします。セラミドやヒアルロン酸などの保湿成分が配合された化粧水や乳液、クリームを選び、肌のバリア機能をサポートしましょう。マスクを外した後の急激な乾燥を防ぐためにも、保湿は非常に重要です。
- メイク: マスクで隠れる部分は、できるだけ薄いメイクにするか、ノーメイクで過ごすことをおすすめします。ファンデーションなどの油分は毛穴を詰まらせやすく、ニキビの原因となることがあります。
マスクを外すタイミングとリフレッシュ
長時間マスクを着用し続けると、肌への負担が増大します。可能な限り、マスクを外して肌を休ませる時間を作りましょう。
- 休憩時の外し方: 人との距離が保てる場所や、換気の良い場所では、一時的にマスクを外して肌を空気に触れさせましょう。この際、顔の汗を清潔なタオルやティッシュで優しく拭き取り、必要であれば保湿ミストなどで水分補給をすると良いでしょう。
- 自宅でのケア: 帰宅後はすぐにマスクを外し、優しく洗顔して保湿を行います。肌が疲れていると感じる日は、シートマスクなどで集中的な保湿ケアを取り入れるのも効果的です。
マスクを外す際は、周囲の状況を確認し、感染症対策を怠らないようにしましょう。特に、医療機関や高齢者施設など、感染リスクが高い場所でのマスク着用は必須です。
マスク肌荒れの治療と対策
予防策を講じても肌荒れが改善しない場合や、症状が悪化している場合は、皮膚科医による専門的な治療が必要です。自己判断での対処は症状を悪化させる可能性もあるため、早めに医療機関を受診することが推奨されます。当院では〜という患者さまが多くいらっしゃいます。
皮膚科での診断と治療
皮膚科では、患者さまの肌の状態や症状に応じて、適切な診断と治療を行います。
- ニキビ治療: 保湿剤や外用薬(ディフェリンゲル、ベピオゲルなど)による毛穴の詰まり改善、炎症抑制、アクネ菌の殺菌を行います。症状によっては内服薬が処方されることもあります。
- 接触皮膚炎治療: 原因となる物質の特定(パッチテストなど)と除去が重要です。炎症を抑えるためにステロイド外用薬が処方されることが一般的です。かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬の内服も検討されます。
- 乾燥肌治療: 高い保湿効果を持つ外用薬(ヘパリン類似物質など)や、肌のバリア機能を修復する成分を配合したクリームが処方されます。
- 酒さ治療: 炎症を抑える外用薬(メトロニダゾール、アゼライン酸など)や内服薬(テトラサイクリン系抗生物質など)が用いられます。赤みに対してはレーザー治療が検討されることもあります。
専門家による診断は、自己判断では見分けにくい症状(例: ニキビと毛嚢炎、アレルギー性接触皮膚炎と刺激性接触皮膚炎など)を正確に区別し、的確な治療へと繋がります。
自宅でできる追加ケア
皮膚科での治療と並行して、自宅でできる追加ケアも肌荒れの改善をサポートします。
- 清潔な環境の維持: 寝具や枕カバーはこまめに洗濯し、清潔に保ちましょう。顔に触れるものは、常に清潔であることが重要です。
- バランスの取れた食事: ビタミンやミネラルを豊富に含む野菜、果物、タンパク質を積極的に摂り、肌の健康を内側から支えましょう。特にビタミンB群は肌の代謝を助け、ビタミンCは抗酸化作用やコラーゲン生成に関与します。
- 十分な睡眠: 睡眠不足は肌のターンオーバーを乱し、肌荒れを悪化させる原因となります。質の良い睡眠を十分にとることで、肌の回復を促しましょう。
- ストレス管理: ストレスはホルモンバランスを崩し、肌荒れを引き起こすことがあります。適度な運動やリラックスできる時間を作るなど、ストレスを上手に管理することも大切です。
これらの生活習慣の改善は、肌荒れの根本的な解決に繋がり、治療効果を高めることが期待できます。
マスク肌荒れに関するよくある疑問

マスク肌荒れに関して、患者さまからよく寄せられる疑問とその回答をまとめました。これらの情報を参考に、ご自身の肌荒れ対策に役立ててください。
マスク肌荒れはいつまで続く?
マスク肌荒れの期間は、原因や症状の重さ、対策の実施状況によって大きく異なります。軽度の摩擦や乾燥であれば、適切なスキンケアとマスク選びで数日から数週間で改善が見られることが多いです。しかし、ニキビや接触皮膚炎のように炎症が強い場合や、慢性的な要因が絡んでいる場合は、数週間から数ヶ月、あるいはそれ以上の治療期間を要することもあります。マスク着用が必須である限り、肌への負担はゼロにはならないため、継続的なケアが重要です。治療を始めて1ヶ月ほどで「赤みが引いてきた」「ニキビができにくくなった」とおっしゃる方が多いですが、完全に症状がなくなるまでには根気強いケアが必要であることをお伝えしています。
敏感肌でも使えるマスクはありますか?
はい、敏感肌の方でも比較的安心して使えるマスクはあります。一般的に、肌への刺激が少ないとされる素材は以下の通りです。
- 綿(コットン): 通気性と吸湿性に優れ、肌触りが柔らかいのが特徴です。
- シルク: 保湿性があり、摩擦が少ないため、肌への刺激を抑えられます。
- 不織布マスクのインナー: 不織布マスクの内側に、綿やシルクのガーゼやシートを挟むことで、直接肌に触れる部分の刺激を軽減できます。
また、マスクのゴム紐による耳の裏のかぶれが気になる場合は、耳にかけないタイプや、紐が太く柔らかいタイプを選ぶことも有効です。複数の種類を試してみて、ご自身の肌に合うものを見つけることが大切です。
マスクによる肌荒れを防ぐメイク方法は?
マスク着用時のメイクは、肌への負担を最小限に抑えることがポイントです。
- ベースメイクは薄く: マスクで覆われる部分は、ファンデーションの使用を控え、日焼け止めやBBクリーム、パウダーなどで軽く仕上げるのがおすすめです。油分の多いリキッドファンデーションやクッションファンデーションは、毛穴を詰まらせやすい傾向があります。
- ポイントメイクに注力: マスクから出る目元に重点を置いたメイクにすることで、顔全体の印象を明るく保ちつつ、肌への負担を減らせます。
- メイク直しは最小限に: マスク内部で汗や皮脂が混じり、メイクが崩れやすくなります。メイク直しは、ティッシュで優しく皮脂を抑えてから、軽くパウダーを乗せる程度に留めましょう。
帰宅後は、肌にメイクが残らないよう、クレンジングと洗顔を丁寧に行うことも忘れないでください。
まとめ
マスク生活による肌荒れは、摩擦、蒸れ、乾燥といった複数の要因が絡み合って発生し、ニキビ、接触皮膚炎、乾燥、酒さの悪化など多様な症状を引き起こします。これらの肌トラブルを予防するためには、肌に優しい素材のマスクを選び、正しい着用を心がけるとともに、日々の丁寧な洗顔と徹底した保湿が不可欠です。また、可能な範囲でマスクを外して肌を休ませる時間を作ることも重要です。もし肌荒れの症状が改善しない場合や悪化する場合には、自己判断せずに速やかに皮膚科を受診し、専門医による適切な診断と治療を受けることを強く推奨します。医師の指導のもと、適切な治療と生活習慣の改善を組み合わせることで、マスクによる肌荒れの症状を和らげ、健康な肌を維持することが期待できます。
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よくある質問(FAQ)
- Akshitha Thatiparthi, Jeffrey Liu, Amylee Martin et al.. Adverse Effects of COVID-19 and Face Masks: A Systematic Review.. The Journal of clinical and aesthetic dermatology. 2022. PMID: 34980966
- Andreas Brynolf, Inese Hauksson, Ola Bergendorff et al.. Contact allergy investigations in healthcare workers with face mask-related skin disease.. Contact dermatitis. 2023. PMID: 37072615. DOI: 10.1111/cod.14318
- Kaihui Hu, Jing Fan, Xueqin Li et al.. The adverse skin reactions of health care workers using personal protective equipment for COVID-19.. Medicine. 2020. PMID: 32541493. DOI: 10.1097/MD.0000000000020603
- Jette G Skiveren, Malene F Ryborg, Britt Nilausen et al.. Adverse skin reactions among health care workers using face personal protective equipment during the coronavirus disease 2019 pandemic: A cross-sectional survey of six hospitals in Denmark.. Contact dermatitis. 2022. PMID: 34865243. DOI: 10.1111/cod.14022
- S Y Choi, J Y Hong, H J Kim et al.. Mask-induced dermatoses during the COVID-19 pandemic: a questionnaire-based study in 12 Korean hospitals.. Clinical and experimental dermatology. 2021. PMID: 34081799. DOI: 10.1111/ced.14775
- アネメトロ(メトロニダゾール)添付文書(JAPIC)
- ヘパフィルド(ヘパリン)添付文書(JAPIC)
